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家族構造の変化と未来: 甥や姪に頼る時代へ

日本の社会構造は急速に変化しています。その一例として、2020年の国勢調査ではかつて主流だった夫婦と子世帯が25.1%、夫婦のみの世帯も20.1%まで低下する一方、単独世帯が全体の38.1%を占めるまでになるなど、多様化が進んでいます。その結果、各世帯が抱える問題も多種多様となってきています。

特に興味深い動きが見られるのが、50代の単独世帯と夫婦のみ世帯です。私のセミナーでも「甥や姪に面倒を見てもらいたい、そのためにはどう備えたらいいか」という共通の質問が寄せられており、その割合も上昇してきています。初めてこれらのご質問をお受けしたとき、「甥や姪の意思を無視して一方的な希望を抱いて大丈夫なのだろうか」と案じたものですが、今ではこれらの世帯にとってごく普通の希望と認識するように変わっていきました。

皆さんもWEBで「甥姪に面倒をみてもらいたい」と検索してみてください。「甥姪に面倒を見てもらうことの何がいけないのか」という意見と、「育ててもいない甥姪に頼るとは何事か」という反対意見で相当数の議論がなされている様子もわかるはずです。これらは独身や子どもがいない状況、家族のサポートが得られないなど、多様な状況の中で甥や姪への頼み方を模索している現れであるのは間違いなさそうです。

さて、これらを考える上で、二つの大きな課題が存在します。

一つ目の課題は、甥や姪自身の感情です。甥や姪の多くは、この話題に自分が登場していることだけでも嫌悪感を持つでしょう。「親でもないのに、ただ血がつながっているというだけで、なぜ自分が面倒をみなければならないのか」と考えることは普通の話です。稀に、自分から積極的に「叔父叔母にはお世話になったので、将来は絶対に私が面倒を見てあげたい」という甥や姪が存在するのも事実です。ただし、そう感じてもらえる叔父や叔母は、かつて甥や姪の成長に協力し、困ったときには親身に相談し、資金援助もするなどの積極的に関係を築いた方に限られているようです。

二つ目の課題は、甥や姪の親御さんからの反対です。親御さんからすれば、子どもに過度な負担をかけたくないという思いを持つのは普通ですし、特に、親御さんの中には「自分たちでも子供に迷惑をかけないように努力しているのに、どうしてそんな話ができるのか」と憤る人もいます。そのため、甥や姪に頼る際にはその親御さんに事前に相談し、理解と許諾を得ることが大切ですが、これを怠ると家族間の関係に亀裂を生む可能性があります。

さて、甥や姪に面倒を見てもらうためには、甥や姪との深い信頼関係を築くこと、法律や税制の知識を持って適切に相続や後見に対する準備、そして甥や姪、その親との十分な話し合いが必要となります。具体的には次の5点を意識してみてください。

(1)彼らとのコミュニケーションを大切にする
(2)彼らとの約束を守り、頼られるよう信頼関係を築く
(3)彼らの成長を精神的にも経済的にもサポートする
(4)彼らに対し、自己中心的でない姿勢を持つ
(5)彼らに感謝とお礼を示す

将来、自分の面倒を見てもらうためには、(1)~(5)に加えて、例えば、財産を甥や姪に相続させる等、積極的な関与が不可欠です。また、その相続財産が数百万円程度である場合、甥や姪にとっては割に合わない可能性も高く、金額面のギャップには相当な配慮が求められます。

また、少子化が進行する中、親族に単独世帯が複数いる場合、甥や姪の"争奪戦"が起こるケースも増えてくるでしょう。とはいえ、甥や姪にはキャパシティが限られていますから、結局はご自身が甥や姪が自発的に面倒を見たくなるような関係を築けたかどうかに尽きる話です。くれぐれも、中高齢に差し掛かってから慌てて甥や姪との関係構築に奔走するようでは話になりません。

単独世帯が増える現代社会において、甥や姪に頼るという選択肢の増加は事実ですが、それはただ便利な選択肢ではなく、深い思いや期待、そして相互の信頼関係に基づくものでなければならない点を認識しましょう。それが甥や姪やその親御さんにとっても公平であり、そしてその公平さが家族間の良好な関係を保つためには欠かせない点を忘れてはなりません。

塚原 哲(つかはら さとし)

CFP ファイナンシャル・プランナー

生活経済研究所®長野 所長

公開日: 2023年08月17日 10:00