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災害時に家族の安否を知る方法
●スマートフォンが役に立たないことも
子どもから高齢者まで、一人一台スマートフォンを所有するのが当たり前の時代に、なぜ家族の安否確認を取り上げるのでしょうか。理由は簡単で、災害発生時は被災地へ安否確認の電話が急増するため、通話がつながりにくい状況(輻輳(ふくそう)という)になるからです。携帯電話やスマートフォンがあれば自由に通話ができるとは限らないのが災害時なのです。
また、携帯電話やスマートフォンが普及したからこそ、その弊害として多くの人が緊急時の連絡方法について準備を怠っているのではないかという思いもあります。
●災害用伝言ダイヤル(171)が提供される
被災地への通話がつながりにくい輻輳(ふくそう)になった場合、速やかに提供されるのが災害用伝言ダイヤルです。これは、声の伝言板ともいえるサービスで、自分の状況を録音したり、家族の安否を確認できたりします。
利用可能な電話は、通常の固定電話、携帯電話・PHS、INSネット、公衆電話、ひかり電話、あるいは災害時にNTTが避難所などに設置する災害時用公衆電話です※1。
利用にあたり申し込み手続きや契約は必要なく、「171」をダイヤルすれば利用可能です。NTTの電話サービスから伝言の録音・再生をする場合、通話料も無料です。しかし、災害用伝言ダイヤルは、固定電話や携帯電話などの特定の番号をキーとして伝言の録音・再生を行う仕組みのため、家族・親戚・友人間でどの電話番号をキーとするかを、あらかじめ決めておかなければいけません。
●伝言には様々な制限もある
1つの伝言が録音できるのは30秒まで、残せる伝言数は1つの電話番号あたり最大で20程度まで、保存期間は災害用伝言ダイヤルの運用期間終了までです。しかし、実際の録音時間や保存数、保存期間などの運用方法・提供条件については、災害の状況等に応じてNTTが設定します。
登録できる伝言数を超えてしまった場合は、「登録可能件数を上回っているため、古い伝言に上書きして登録します」というガイダンスが流れ、古い伝言から順に削除される仕組みになっています。
家族・親戚・友人以外に伝言を聞かれたくない場合は、あらかじめ暗証番号を決めておき、伝言録音時に暗証番号を入力します。これにより暗証番号を知っている方のみが伝言を再生できるように設定できます。暗証番号は任意の数字4桁で、伝言ごとに設定ができます。
また、災害用伝言ダイヤルの起動直後は被災地内にいる人の伝言(安否情報)が優先されるため、被災地外からの伝言録音は一時的に制限されます。企業等が従業員の安否確認として利用することもできません。家族・親戚・友人等の間で行う安否確認を目的としているため、その支障になる可能性があるためです。
●体験利用ができる
災害発生に備えて利用方法を事前に覚えることを目的に、体験利用できる機会が提供されています。体験利用時においても災害運用時と同様に、NTTの電話サービスから伝言を録音または再生する電話番号までの通話料は無料です。
<体験利用提供日>
・毎月1日、15日 00:00~24:00
・正月三が日(1月1日00:00~1月3日24:00)
・防災週間(8月30日9:00~9月5日17:00)
・防災とボランティア週間(1月15日9:00~1月21日17:00)
世界で起きているマグニチュード6以上の地震の約2割が日本で発生しているといわれ、近い将来、発生する可能性が高い巨大地震がいくつも存在します。その確率は30年以内に60〜70%ともいわれています。体験利用の機会は毎月ありますから、高齢者や小さなお子さまがいる世帯などは、定期的に練習しておくと良いでしょう。
100年前の関東大地震で被災した人たちは、上野の西郷隆盛像や街中の電柱などの目立つ所に貼り紙をして、行方が分からない家族の居場所を尋ねたり、自分の居場所を知らせたりしたそうです。地震大国であることを自覚したうえで、いくつもの地震を経験してきたからこそ、生かせる教訓を次世代繋いでいかなければなりません。災害の被害は、個人が防災対策を講じることで大幅に軽減できることからも、しっかりと備えていきたいものです。
※1. INSネット、ひかり電話のダイヤル式電話は利用できない
関口 輝(せきぐち あきら)
AFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所®長野 事務局長