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幸せはお金で買える?買えない?お金のウェルビーイングを考えよう
あなたは今、幸せでしょうか。
こんな設問をファイナンシャルプランナーから出されると戸惑う人も多いかもしれません。「お金のコラムを読みに来たはずが、なぜ幸せについて聞かれるのだろう」と思うかもしれません。
でもちょっとだけでいいので、自分の、そして自分と家族の幸せについて考えてみましょう。
・今は幸せと言えるか(自分はどうか、家族がいれば家族はどうか)
・将来も幸せでいられると思えるか
・もし幸せではないと思うなら……
・どの部分に不幸せや不安を感じているのか
・それは解決できそうなものか
多くの人はまず、幸福といえば友人の存在や家族をあげるのではないでしょうか。困ったときに支えられる友人や仲間がいること、家族、特に配偶者や子どもの存在が幸せの源泉という人は多いと思います。
もう少し広く、幸福を支える要素を考えてみると、日々の仕事が充実しており、安定的な給与や賞与が得られる状況は幸せを形作る基盤ですし、また、安心して暮らせる住居を確保できていることも大切です。
さらにもっと広く捉えれば、生命の不安がなく安心して暮らせ、水や食料の不安もないこと、インフラも整っていて快適であることも幸せのベースといえるかもしれません。日々の生活では実感できませんが、実は日本はこうした安心がしっかり確保されている国でもあります。
――ちょっと幸せについて広く考えすぎました。もう一度私たちの日々の幸せに立ち返ってみましょう。
■お金を「使わない幸せ」こだわってみよう
「家族もいて基本的には幸せだけど、おカネがなくてねえ……」という人にできることはまず、日々の家計管理です。家計を黒字にできる人は実は幸せの一歩をつかみとっているのです。
そして、「お金を使わない幸せ」を意識してみましょう。消費する金額の多少で幸福度が変わる、というのは1980年代のバブル経済のころにもてはやされた古い発想です。むしろ幸せのカギはお金の「量」だけで決まるものではないのです。
年金生活をされているおじいちゃんやおばあちゃんは、年に一度遊びに来てくれる孫と過ごす一週間の幸せで1年を幸せに過ごしているかもしれません。
季節の変化を庭木に見いだしたり、散歩しながら日々の幸せを感じられる人は、お金がなくても幸福感を味わっています。子どももそうです。お金をたいして使わなくても、幸せを得ることはできるのです。
趣味や生きがい、人間関係がそこでは重要になります。ある調査では、趣味の有無、人間関係の有無は幸福度に大きな影響を与えているといいます。幸福度の多くの部分は、金額の多少ではなく、感動や経験が強く作用しているという研究もあります。
お金を出すにしても「初めての経験」「初めての感動」に自覚的にお金を使ってみましょう。例えば
・初めて鑑賞する映画や劇
・子どもとの初体験(散歩、旅行、工作、観劇など)
・初めて食べる新作スイーツ
・仕事あがりの一杯目のビール
などは、ちょっとのお金でたくさんの感動や経験を買うことになります。そう考えてみると、お金の使い方をちょっと工夫するだけで、幸せ度がぐっとアップしてくるかもしれませんね。
■お金を「使う幸せ」きちんと向き合ってみよう
お金を使わない、あるいはちょっとの予算で幸せを得る、ということを意識するようになると、同じ人生が違って見えてきます。
自覚的に幸せと向かい合うようになってきたら、今度は、計画的に幸せを買うための予算づくりを意識してみましょう。
家族との幸せや体験を重視する、といっても「キャンプに子どもを連れて行きたい」と思ったとき、少なくともその予算を確保する必要があります。
こうした予算については計画をたてることで幸福を手に入れることができます。上手に「幸せを買う」ことを考えてみるのです。
「毎月1万円ずつ貯金して、1年後に家族旅行に行こう!」というような目標を考え実行すれば、家族旅行の夢が叶います。1年後には旅行そのものの幸福だけではなく、計画を成し遂げた達成感もあなたを幸せにしてくれます。
1年後だけでなく、もう少し未来の幸せのためにお金を確保していく習慣を作っていけると理想的です。このとき「貯金を続けるのが辛い」と考えるのではなく「貯金は未来の幸せを買うためのがんばりである」と発想を変えてましょう。
同じ金額の貯金を、ただ苦しいイヤなことと思うか、未来の幸せを買うためのがんばりだと思うかは大違いです。自分が気持ちよくなれる発想のほうを選んでください。
■未来の不安は、現在の幸福度を下げてしまう
計画的なお金の準備を考えるようになると、未来の不安を軽くすることにもつながっていきます。例えば、なんとなく老後の不安を抱えているだけではお金の不安がばくぜんと今の幸福度もダウンさせてしまいます。
それよりも、公的年金制度や退職金制度の見込額を調べて、必要に応じてiDeCoやNISAに加入し資産を増やす努力を実行している人のほうが幸福度は高まります。
実際、計画的にiDeCoやNISAを通じて資産形成をしている人のほうがそうでない人よりも幸福度が高いという調査があるそうです。
一歩先、二歩先の幸せのことも考えられるようになれば、私たちはお金と幸せの問題で、悩みから解放されていくことになるでしょう。
■まとめ:お金が幸せの全てではない けれどお金の問題はやっぱり大事
今回は幸せとお金の関係について、「お金を使って得る幸せ」と、「お金を使わず得られる幸せ」を考えてみました。
近年では幸福学というべき学問分野(ウェルビーイング学)の研究が進んでいます。そこでは、幸せを幅広く考えていますが、「お金が幸せの全てではない」ということが確認される一方で、「ある程度のお金の問題解決もまた幸せを構成する要素である」ということも明らかになりつつあります。
目の前の幸せについて、一度じっくり考えたなら、今ある幸せや将来の幸せ(あるいは不安の解消)のために、何かお金の問題で解決できることはないか考えてみてください。お金の悩みや不安が解決すると、ぐぐっと幸福度が高まってくるはずです。
お金と上手につきあいながら、たくさんの幸せを感じられる人生を送りたいものですね。
山崎 俊輔(やまさき しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表
(嘱託) 企業年金連合会 会員センター調査役 確定拠出年金担当
DCプランナー1級(日本商工会議所・社団法人金融財政事情研究会認定)
ファイナンシャルプランナー(AFP資格 FP協会認定/2級FP技能士)
消費生活アドバイザー