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空き家を放置すると税金が6倍になる?

5年ごとに調査が行われる総務省統計局の「土地統計調査(2018年)」によると、活用の目処が立たない長期放置の空き家は国内に349万戸もあるそうです。5年前(2013年)の調査と比べ3.6%の増加と聞くとわずかな気もしますが、件数では29万3千戸の増加となり、いかに空き家が増えているかがわかります。空き家が有効に活用される見込みがあるならまだしも、1世帯当たりの住宅数が1.16戸(2018年)と、そもそも住宅が足りている現状と照らすと、それも一筋縄ではなさそうです。

◆空き家を放置するとどうなるか
住む親族がおらず他に使い道もないからと、空き家を放置したままにしておくと、自治体から「特例空家」に指定されるケースがあります。必要な措置を怠れば、最大50万円以下の過料が科せられたり、「住宅用地の特例措置」の対象から除外され税金が高くなったりするデメリットがあります。
遠く離れた実家の土地建物が、高齢の親の所有となっているケースなど、ドキッとする人も多いのではないでしょうか。

◆「特定空家」とは
2015年に施行された「空家等対策特別措置法」では、次のいずれかに該当するものを「特定空家」と定義しています。

1.そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
2.そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
3.適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
4.その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

◆「特定空家」と認定される前段階での措置
ただし、ある日突然、所有している空き家が「特定空家」に指定されるわけではありません。空き家の所有者が遠方に住んでいる、または相続により取得した等の事情により空き家の状態を把握していない、または自らがこの空き家の所有者であることを認識していないといった可能性が考慮されます。

(1)情報の提供、助言等(任意の助言)
そこで、適切な管理が行われていない空き家について、自治体はまず所有者に連絡を取り現状を伝えるとともに、今後の改善策や処分・活用についての意向など、所有者の主張を含めた事情把握をします。
この段階で、空き家の状態について所有者が改善の意思を示し、すぐに実行すると見込まれれば、「特定空家」の認定に至らずに問題解決を図れます。 
(2)立入調査
市町村長は、法の規定の施行に必要な限度において、当該職員又はその委任した者に、空き家等と認められる場所に立ち入って調査をさせられます。この立入調査は、外観目視による調査では足りず、敷地内に立ち入って、建築物に触れるなどして詳しい状況を調査し、必要に応じて内部に立ち入って柱や梁等の状況を確認する必要がある場合に実施します。

(3)助言・指導
最初に行われた(1)任意の助言を受けても状況の改善が見られない場合、「特定空家」と認定されます。市町村長はその所有者に対し、除却、修繕、立木竹の伐採、その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとるよう、「助言」または「指導」できます。
それでも状態が改善されないときは、市町村長は「勧告」を行う可能性があること、勧告を受けると地方税法の規定に基づき、当該特定空家等に係る敷地について固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外されることについて所有者に対してあらかじめ示し、所有者自らが改善するように促します。

(4)勧告
撤去・修繕など指導を受けながら改善されない場合、「勧告」が出されます。勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例から除外されます。
固定資産税の住宅用地特例とは、家屋があれば土地の固定資産税を更地の場合よりも最大6分の1に軽減される措置です。 
(5)命令
勧告を受けても改善されない場合、命令が出されます。命令に従わなければ、50万円以下の過料を科せられます。命令が出された「特定空家」には、標識が設置されるとともに、その旨の内容が公示されます。なお、命令の措置は「不利益処分」の扱いとなり、所有者に聴聞と弁明の機会が与えられます。

(6)行政代執行
命令を無視して適切な空き家管理をしない悪質なケースでは、自治体による「行政代執行」による解体が行われる可能性があります。行政代執行とは、義務者(所有者)に代わり、行政がその義務(建物解体等)を行い、その費用を義務者に請求するものです。


「特定空家」に指定されなくても、空き家はその維持管理自体にお金がかかります。必要に迫られてから処分を考えるのではなく、早めに対処すべきものです。それが故郷に対する何よりの貢献になるのではないでしょうか。

関口 輝(せきぐち あきら)

AFP ファイナンシャル・プランナー

生活経済研究所®長野 事務局長

公開日: 2023年12月14日 10:00