全員

従業員持株会(自社株投資)のメリット・デメリット

2023年6月に東京証券取引所が公表した「2021年度従業員持株会状況調査結果の概要」によると、2022年3月末時点で東証に上場している3,815社のうち、大和証券、SMBC日興証券、野村證券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の5社のいずれかと事務委託契約を締結している従業員持株制度のある企業は、3,247社だったようです。割合としては約85%。多くの企業が従業員持株会を実施していることがわかります。

しかし、実際に従業員持株会を利用している人の数を見てみると、従業員持株会実施企業の全従業員数約792万人のうち、持株会加入者数は約298万人となっています。割合としては約38%。企業によって利用者の割合は異なるでしょうが、全体で見ると利用者は4割に満たない状況のようです。

そもそも、従業員持株会の制度とは、勤務している自社の株式を給与天引きで毎月積立購入できる制度です。大きなメリットとしては、自分たちが頑張って働き、会社の業績を伸ばしていければ、給与やボーナスが増えるだけでなく、自社株の株価上昇によって保有資産の増大も期待できる点が挙げられるでしょう。

また、毎月一定金額ずつ積立購入できることで、ドルコスト平均法の効果も得られます。毎月一定株数ずつ積立購入するよりも平均購入単価を低く抑えられる効果も期待できます。

さらに、従業員持株会を実施している企業のうち96%の企業が、従業員の積立額に一定の奨励金を支給しています。奨励金の額は、積立額の5~10%としている企業が7割くらいを占めていますが、なかには積立額の50%や100%を奨励金として支給している企業もあります。

奨励金を支給する企業が多い理由は、従業員持株会には企業側のメリットもあるからです。例えば、2023年9月末時点のNTTの大株主一覧を見ると、9番目に「NTT社員持株会」との記載があります。社員持株会で6億株近い株数を保有しているようです。従業員持株会は、社員による自社株積立なので、大量の売りが出る可能性が低く、安定株主として存在していてくれる企業にとってのメリットがあるわけです。

個人的な意見ではありますが、奨励金を上乗せしてくれて自社株を積立投資できる従業員持株会は、少額でもいいので絶対に利用しておくべきだと思います。近い将来に離職や転職を予定している場合は無理に利用する必要はありませんが、長年勤め続ける可能性があるなら、そして、自分の会社の中長期的な成長を信じるなら、資産形成のひとつの選択肢として有効だと思うからです。

もちろん、従業員持株会にもデメリットはあります。まさに、26年ほど前に私が経験した勤務先企業の破たんです。自社株は当然ながら無価値になります。職を失うのと同時に、自社株という財産も失います。従業員持株会は、そういう意味ではリスク分散ではなく、リスクが偏ってしまう制度だと言えます。ですので、企業型DCやiDeCo、NISAなどを利用した分散投資も、必ずやっておくべきでしょう。

とはいえ、上場企業が破たんする確率はさほど高くはありません。2022年は2年ぶりに1件発生しましたが、過去50年程度の推移を見ると、多い年でも5件程度です。リーマンショックの起きた2008年は33件と急増しましたが、それでも全上場企業の1%未満、通常なら0.1%未満だと認識しておいてもよいでしょう。

結論としては、やはり、奨励金のつく従業員持株会の制度があるなら、少しずつでも利用しておくべきではないかと思います。
 


菱田 雅生(ひしだ まさお)

CFPファイナンシャル・プランナー

生活経済研究所®長野 提携講師

1級FP技能士

1級DCプランナー、

住宅ローンアドバイザー

確定拠出年金教育協会 研究員

アクティブ・ブレイン・セミナー マスター講師

公開日: 2023年12月28日 10:00