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iDeCo(イデコ)の資産配分の考え方

皆さんご承知の通り、2017年1月より個人型確定拠出年金制度、愛称「iDeCo(イデコ)」の加入対象者が拡がりました。これまで加入することができなかった、公務員、勤務先に確定給付型企業年金制度がある勤労者、専業主婦などが加入できるようになったわけです。その詳細はさまざまなところで報じられているため割愛させていただきますが、金融機関は埃をかぶっていた同制度(取り扱っていたが商売にならなかった)をリニューアルして再度ビジネス化しようと躍起になっているようです。ビシネスになるかはさておき、加入する際に留意すべきことについて述べさせていただきましょう。

投資の経験がある人であれば大丈夫だと思われますが、iDeCoには加入者教育が義務づけられていません。確定拠出年金制度には、勤務先を通じて加入する「企業型」と加入者が金融機関を選んで加入する「個人型(iDeCo)」があります。このうち、企業型は勤務先が従業員に対して加入者教育を行わなければなりません(勤務時間中に行う)。教育の内容は、公的年金制度や確定拠出年金制度の仕組み、老後や資産運用の考え方などです。制度設計はまだしも、気になるのがiDeCo加入時に、資産運用の考え方を金融機関がきちんと加入者に話しているのかという疑問です。プラスすれば、企業型の内容にも「?」を付けざるを得ないのですが…。
鍵は分散投資にあると思われます。筆者もかなり前に企業型の加入者教育の講師を行った経験があるのですが、分散投資の考え方は、毎月の掛け金(拠出金)の中でしっかり行いましょうということでした(今は変わっているのかもしれませんが)。間違ってはいないのですが、分散投資を考えるのであれば、掛け金以外、自分が保有する金融資産を含めたうえで分散投資を考えるべきです。たとえば、これまで投資は全く経験がなく、保有する同年代平均並みの金融資産は全て預貯金などの元本保証の商品だけのAさん。年齢などの細かな条件は割愛させていただきますが、Aさんが確定拠出年金で選んだ商品が「外国株式インデックスファンド」1つだけとしましょう。分散投資という観点からは、1つの商品に集中、しかもリスク・リターンの高い外国株式で運用される投資信託だけなんてもってのほかとなるでしょう。しかし、Aさんがすでに保有している金融資産を含めて分散投資を考えてみると、金融資産全体でリスクを取っているのはわずか数%、あるいは1%未満に過ぎないのです。金融資産全体の1割になるにも相応の時間がかかるはずです。これなら掛け金全額で外国株式インデックスファンドに投資していっても、リスクの取りすぎにはならないでしょう。

かなり極端なケースになりますが、確定拠出年金制度の毎月の掛け金だけで分散投資を考える場合と、保有する金融資産全てを含めて考える場合の分散投資は全く異なるということがおわかりいただけたと思います。実際の場面では、今回割愛させていただいた年齢、年収、住宅ローンの有無、加入者のリスク許容度やリスク選択度を考慮したうえで、最終的に運用していく金融商品を選ぶことになります。「リスク許容度とリスク選択度」については別の機会に解説することにしますが、企業型、iDeCo(個人型)問わず、商品選びの際は毎月の掛け金だけではなく、保有する金融資産全体を含めて考えるべきなのです。
深野 康彦(ふかの やすひこ)

AFP ファイナンシャル・プランナー
有限会社ファイナンシャルリサーチ 代表
公開日: 2017年02月23日 10:00