株価の急落にどう備える?-投資方針書作成のススメ-
今年(2024年)8月初旬に株価が大きく下げる場面がありました。投資をはじめたばかりの方は変動の大きさに驚いたり、怖くなったりした方もいたかもしれません。投資信託や株式をできるだけ長く保有し、頻繁に解約しないこと。投資では、短期的な価格変動を受け入れて、長期的なリターンを享受することが大切です。
ところが、現実にはこれがなかなか難しいようです。感情が先に立つと、保有する投資信託や株式など価格が急落すると怖くなってしまいます。
では、どうしたらよいでしょうか。
事前の準備が大事!
地震が起こってから、「家に水は置いてあったかな?」「避難場所はどこ?」などと考える人はいないですよね。日頃から万一に備えて、避難場所や経路を確認したり、水や食料、簡易トイレなどの災害グッズを用意したりしているはずです。投資についても同様で、「相場が急落してどうしよう」と慌てるのではなく、準備をしておくことが大切です。
投資方針書を作成しておく
感情に左右されないためには、きちんとルールを決めて、それを淡々と実行するのがいちばんです。例えば、自分なりの「投資方針書」を作成しておき、不安になったときにはそれを読み返すと効果があります。要は戻るべき場所を作っておくわけです。
これは『敗者のゲーム』などの著書があるチャールス・エリス氏や投資教育家の岡本和久氏などもすすめている方法です。投資方針書というとなんだか難しそうですが、要は「自分がどういう方針で運用するか」をまとめておくものです。例えば、次のような内容を決めておくとよいでしょう。
〈投資方針書の例〉
〇目的:リタイアまでに老後のお金をつくる
〇運用期間:60歳までは積極運用、その後は株式の比率を下げる
〇運用方法:投信の積み立て(iDeCoやNISAを優先的に利用する)
〇配分:リスク資産と無リスク資産(預金)が半々になるようにする
〇商品:積み立てるのは日本株と日本を除く世界株のインデックスファンド。それとは別に、課税口座で個人向け国債を保有する
〇チェック方法:年に一度、年末に配分と時価評価額をチェックする
〇その他:万一に備えるお金として、生活費の半年分は預金に置いておく
前述の投資方針書の項目例はあくまでも一例なので、自分のまとめやすい方法で書いておきましょう。投資を始めてから、必要な項目を付け加えたり、見直したりしてもかまいません。結婚などを機に、再度、投資方針書を練り直したという投資家の方もいます。メモ程度でもよいので、ぜひトライしてみてください。
現在、私はnoteでコツコツ投資家さんのインタビューをしていますが、何人か投資方針書を作っているという方もいました。例えば、投信ブロガーのセロンさん(36歳)は『15年投資を続けていても、大きな価格変動、とくに下落局面は今でも怖いです。2020年のコロナショックの時には資産残高が一時的に3割程度急減し、あまりの下落の速さに気持ちが追い付かず、かなり怖い思いをしました。そうした時は「投資方針書」を見返して投資を始めたときの気持ちや過去の歴史(相場はなんども危機を迎え、そして復活してきた)を思い出して、気持ちが落ち着くように努めました』といいます。
投資は未来の不確実さと向き合っていくものだからこそ、自分で決めた投資スタンスを守ることが賢明なのです。
価格ではなく、価値に注目
株式投資というのは本来、その企業の価値を評価して買うべきものですが、人はしばしば価格の動きに惑わされます。例えばリーマン・ショックや東日本大震災のときは、それによって直接業績が悪化するわけでもなさそうな企業の株まで一緒に売られました。短期的には市場に参加するたくさんの投資家たちの心理的な要因で動くことも多いのです。
短期的に大きく下がる局面でも、投資信託という器を通して、その先の投資している企業の価値や、そこで働いている人たちの価値が将来的に高まると考えられるか。そういう意味では下がったときでも持ち続けられる企業や投資信託をきちんと選んでおくことも大切です。
竹川 美奈子(たけかわ みなこ)
ファイナンシャル・ジャーナリスト
LIFE MAP,LLC代表