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日経平均とTOPIXはココが大きく違う!

2024年も残すところ3ヵ月を切りました。まだ終わってはいませんが、今年は日本の株式市場にとっては、記録的な年になったと言えるでしょう。

2月22日には、日経平均株価が平成バブル期の1989年12月29日につけた史上最高値38,915円87銭を34年2ヵ月ぶりに更新しました。そして7月4日には、東証株価指数(TOPIX)が1989年12月18日につけた史上最高値2884.80ポイントを34年7ヵ月ぶりに更新しました。

高値更新の日付が日経平均とTOPIXで違うのは、この2つの指標が根本的に異なるものだからです。今回は、あらためて日経平均とTOPIXの違いを整理しましょう。

▼銘柄数と計算方法が違う

日経平均とTOPIXの大きく違う点は、採用銘柄数と計算方法です。

日経平均は、東証プライム市場に上場している主要225銘柄の株価をもとに計算しています。一方、TOPIXは旧東証一部上場全銘柄である約2,100銘柄(※)で計算されています。TOPIXのほうが、10倍近く銘柄数が多いわけです。

※2022年4月の東証の市場区分見直しを受けて、TOPIXの採用銘柄も段階的に見直されていくことが決まっています。第一段階の見直し(約400銘柄除外)は2025年1月末に終了し、その後、第二段階の見直しに移る予定になっています。

そして、計算方法も大きく異なります。
日経平均は、225銘柄の株価を合計して225で割る「単純平均株価」の考え方を基に、銘柄の入れ替えや、株式分割などの権利落ちがあった際に、過去の株価との連続性を維持するために修正を加えて計算されている「修正平均株価」です。なので、単位は「円(銭)」となっています。

それに対してTOPIXは、旧東証一部上場全銘柄の時価総額を基に計算されている「時価総額加重型指数」です。1968年1月4日の時価総額を100として指数化しているので、単位は「ポイント」となっています。

ちなみに時価総額とは、各銘柄の株価と発行済み株式数をかけたもので、その会社の規模を示していると言われます。ただし、TOPIXを計算する際の時価総額は、発行済み株式数に浮動株比率(実際に市場で流通している株式の割合)をかけた「浮動株数」で計算されています。

▼計算方法の違いによる異なる値動き

日経平均とTOPIXは、同じ日本の株式市場の全体的な動きを表す指標ではありますが、計算方法の違いから、異なる値動きの特徴を持っています。

日経平均は、元々が単純平均の考え方から始まっているので、値段の高い銘柄(値がさ株)の値動きの影響を強く受けます。

例えば、株価100円の銘柄と株価1万円の銘柄では、同じ2%の上昇率でも、+2円(=100円×2%)と、+200円(=1万円×2%)の違いになります。当然ながら、+200円のほうが日経平均株価の動きに大きな影響を及ぼすわけです。

一方、TOPIXは、時価総額を指数化したものなので、時価総額の大きな銘柄(大型株)の値動きの影響を強く受けます。逆に、時価総額の小さな銘柄(小型株)の値動きの影響はあまり受けません。

このような違いから、同じ日本の株式市場の全体的な動きを表す指標でありながら、高値や安値をつけるタイミングがずれることがあるのです。

▼日経平均の1割強はユニクロ!?

値がさ株の値動きの影響を受けやすい日経平均ですが、具体的にはどんな銘柄の値動きに強く影響を受けるのか。2024年8月30日時点のデータから、上位10銘柄を並べてみると、以下のようになりました。

     コード    社名                              ウエート
1    9983    ファーストリテイリング      11.84%
2    8035    東京エレクトロン                 6.55%
3    6857    アドバンテスト                    4.49%
4    9984    ソフトバンクグループ           4.27%
5    4063    信越化学工業                       2.72%
6    6762    TDK                                2.50%
7    9433    KDDI                              2.49%
8    6098    リクルートホールディングス    2.30%
9    4519    中外製薬                              1.87%
10    4543    テルモ                               1.82%
出所:日本経済新聞社のデータから作成

なんと、あのユニクロのファーストリテイリングだけで12%近くを占めています。現在の日経平均の1割強はファーストリテイリングだったのです。つまり、ファーストリテイリングの株価が上がるか下がるかが最も日経平均に影響を及ぼしているということです。

2位の東京エレクトロンも7%近くを占めています。上位の2銘柄だけで、日経平均の2割近くを占めているのです。さらに、上位5銘柄の割合を合計すると約30%、上位10銘柄の割合を合計すると約41%になります。

つまり、日経平均の値動きの4割は、225銘柄のうちの上位10銘柄だけで決まってしまっているということです。ちなみに、下位10銘柄のウエートを合計してみたところ、たったの0.12%でした。下位10銘柄の株価がどんなに大きく動いても、日経平均にはほとんど影響を及ぼさないことがわかります。

▼TOPIXの4%弱がトヨタ

大型株の値動きの影響を受けやすいTOPIXですが、具体的にはどんな銘柄の値動きに強く影響を受けるのか。2024年8月30日時点のデータから、上位10銘柄を並べてみると、以下のようになりました。

     コード          社名                                           ウエート
1    7203    トヨタ自動車                                        3.84%
2    6758    ソニーグループ                                      2.60%
3    8306    三菱UFJフィナンシャル・グループ        2.40%
4    6501    日立製作所                                            2.27%
5    6861    キーエンス                                            1.82%
6    6098    リクルートホールディングス                    1.75%
7    8316    三井住友フィナンシャルグループ               1.72%
8    8058    三菱商事                                                1.60%
9    4063    信越化学工業                                          1.51%
10    8001    伊藤忠商事                                           1.43%
出所:日本取引所グループのデータから作成

日経平均と比べると、上位10銘柄のウエートを合計しても約21%ですので、それほど高くはありません。とはいえ、上位50銘柄のウエートを合計してみると、約52%となっていましたので、対象銘柄が2,100銘柄ほどのTOPIXでも、上位の大型株の影響が非常に強いことがわかります。

ちなみに、日経平均の上位10銘柄とTOPIXの上位10銘柄の両方に載っている銘柄は、信越化学工業とリクルートホールディングスの2社だけでした。このことからも、日経平均とTOPIXの値動きは、少なからず違っていることがわかります。

なお、国内株式で運用する投資信託(ファンド)のベンチマーク(運用目標)として設定されているのは、日経平均よりもTOPIXのほうが圧倒的に多くなっています。その理由は、採用銘柄数が多く、市場全体の値動きをより示していると考えられているためでしょう。

日経平均とTOPIXは、ともに非常に重要な国内株式の指標ですので、あらためて日々の動向を確認してみてください。
 


菱田 雅生(ひしだ まさお)

CFPファイナンシャル・プランナー

生活経済研究所®長野 提携講師

1級FP技能士

1級DCプランナー、

住宅ローンアドバイザー

確定拠出年金教育協会 研究員

アクティブ・ブレイン・セミナー マスター講師

公開日: 2024年10月03日 10:00