【フラット35】の新機構団信は得か損か?
2017年の10月1日から、【フラット35】の機構団信がリニューアルされました。これまでの制度と区分するため新機構団信※1と命名され、「抜本的な商品改善を行った」とされています。利用者として一番気になる点は、従来の制度と比べて負担する金額が多くなったのか、少なくなったのかではないでしょうか。今回はその点について確認いたします。
1.最大の変更点
機構団信とは、住宅ローンを返済中の方に万一の事態が起こった際、ローン残高を完済してくれる生命保険です。これまではローン返済とは別に毎年保険料を支払う仕組みでしたが、今回のリニューアルによって、融資金利に機構団信の保険料相当額として0.28%※2が上乗せされ、含まれることになりました。銀行の住宅ローンでみられる保証料の金利上乗せと同じ位置づけになったとイメージすればよいでしょう。
気になるのは、0.28%の上乗せが、年に1回支払っていた今までよりも得なのか損なのかに尽きます。新旧の機構団信の掛金総額を比較してみましょう。
A.機構団信(2017年9月30日まで申込み)
融資金利:1.31%※3、借入額:2,000万円、返済期間:30年、元利均等返済の場合
機構団信の特約料合計 = 1,135,900円
B.新機構団信(2017年10月1日以降申込み)
融資金利:1.59%※4、借入額:2,000万円、返済期間:30年、元利均等返済の場合
新機構団信分の0.28% = 963,242円
計算の結果から、新機構団信の方が172,658円負担は少なくなることがわかります。つまり、利用者の立場からすれば、今回のリニューアルは歓迎すべきことといえそうです。
2.保障内容の変更
給付対象も広がりました。これまで「死亡保障+高度障害保障」だった保障範囲が、新機構団信では「死亡保障+身体障害保障」に、3大疾病付機構団信は新3大疾病付機構団信にリニューアルされ、保障範囲が「死亡保障+高度障害保障+3大疾病保障」から「死亡保障+身体障害保障+3大疾病保障+介護保障」に拡充しています。
身体障害は、身体障害者福祉法に定める1級または2級の障害に該当したとき、介護保障は介護保険法に定める要介護2から要介護5に該当したときに給付されると定められており、給付基準がいずれも公的制度と連動しているという点でも安心です。
注意したいのは、加入可能な年齢と保障期間がタイプによって異なる点です。新機構団信が70歳未満まで、新3大疾病付機構団信は51歳未満まで加入可能、保障期間は新機構団信が80歳、新3大疾病付機構団信は75歳までとなっています。トータルの負担やご自身がすでに加入している共済や保険等とも合わせ、保障タイプを選択する際の参考としてください。
保障内容も掛金もリニューアルされた新機構団信は、年に1度とはいえローン返済以外の負担がなくなったことで、銀行の住宅ローンとの競合上でも大きな魅力を得たと言えそうです。またこれまで通り、健康上の理由で団体信用保険に加入できない人も引き続き【フラット35】の利用はできます。その場合は、新機構団信付のフラット35の融資金利から0.20%引き下げられます。
※1 正しくは新機構団体信用生命保険制度
※2 新3大疾病付機構団信はさらに0.24%のプラス(合計0.52%のプラス)
※3 1.59% - 0.28% = 1.31%
※4 【フラット35】2017年10月2日の東京都内の平均金利
関口 輝(せきぐち あきら)
AFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野 主任研究員