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約60年ぶりに崩れた「選挙は買い」のアノマリー

先日、日本経済新聞の記事にもなっていたので見た方も多いと思いますが、今回の衆議院解散から選挙の投票日までの期間、日経平均株価は約3%下落しました。

株価の下落はよくあることですが、実は、衆議院解散の前営業日と投開票日の前営業日の株価を比較して、日経平均株価が下がったのは、なんと64年前の1960年以来のことだったのです。

現行憲法が施行された1947年以降、衆議院が解散して選挙になったのは、今回も入れると合計で25回でした。そのうち、解散から選挙までの期間で日経平均株価が下がったのは、1952年、1958年、1960年のたった3回しかなかったのですが、今回(2024年)64年ぶりに4回目の株価下落を記録したのです。

日経新聞には、『「選挙は買い」のアノマリー(経験則)が崩れた。』と書かれていましたが、確かに60年以上続いた経験則が崩れたのは、かなりのインパクトだったと言えそうです。

今回、経験則どおりに選挙に向けて株価が上がっていかなかった理由はさまざまだと思いますが、端的に言えば、選挙後の政治や経済に対する投資家の期待度が、投票日に向けて上がっていかなかったことが株価に反映されたのでしょう。

ということで、今回は「選挙は買い」という経験則は外れてしまったわけですが、株式市場などのマーケットにおいては、そのほかにも似たような経験則とも呼べる「アノマリー」というものが存在すると言われています。

そもそも、「アノマリー」とは、「異質」とか「特異」といった意味の言葉です。単なる経験則というよりも、「普通の理屈では説明できない現象」と言ったほうが、より本来の意味に近いと思います。

ここで言う「普通の理屈」とは、「株価の動きは完全にランダムで予測できない」と考える「ランダムウォーク理論」や、「市場は常に効率的で、すべての公開情報は瞬時に株価に反映されるため、誰も市場を出し抜くことはできない」と考える「効率的市場仮説」などが当てはまります。

つまり、普通の理屈としては、株価の動きは予測できないから、確実に儲けることは難しい。または、さまざまな情報を分析しても、株価はすでに織り込み済みなので、市場を出し抜く(=確実に儲ける)ことは難しいわけです。

ところが、「選挙は買い」のように、普通の理屈では説明できない現象が存在するのです。それがまさに、特異な現象(=アノマリー)です。

以下、有名なアノマリーをいくつか挙げてみましょう。

・1月効果…1月の株価は上がりやすい。
・セル・イン・メイ(Sell in May)…5月に株を売って夏は休め。夏は株価が低迷しやすいため。
・ハロウィン効果…10月末や11月に株式市場に戻れ。年末にかけて株価が上昇しやすいため。
・オクトーバー効果…10月に暴落が多い。1987年10月ブラックマンデー、1929年10月大恐慌。
・低PER効果…PER(株価収益率)の低い銘柄のほうが上がりやすい。
・配当利回り効果…配当利回りの高い銘柄のほうが上がりやすい。
・小型株効果…小型株(時価総額の小さな銘柄)のほうが上がりやすい。
・成長株効果…成長性の高い銘柄のほうが上がりやすい。

これらのほかにもアノマリーとして注目されるものにはさまざまなものがあります。アノマリーを知って上手に利用すれば、うまく儲けることができるかもしれません。

しかし、今回の「選挙は買い」が外れたように、アノマリーは「傾向」であって、「確実」ではありません。アノマリーを使えば確実に儲けられるというわけではないのです。

くれぐれも、「アノマリーとは、マーケットで時折みられるクセのようなもの」と理解し、短期売買で勝つことを目指すのではなく、長期的な視点で資産形成・資産運用を考えていくべきです。

それこそが、「普通の理屈」であるランダムウォーク理論や効率的市場仮説からしても、まともな考え方ですし、大きな失敗を避けるためにも有効だと言えるでしょう。

菱田 雅生(ひしだ まさお)

CFPファイナンシャル・プランナー

生活経済研究所®長野 提携講師

1級FP技能士

1級DCプランナー、

住宅ローンアドバイザー

確定拠出年金教育協会 研究員

アクティブ・ブレイン・セミナー マスター講師

公開日: 2024年10月31日 10:00