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2025年4月から全世帯を対象に高校の授業料無償化

2025年度予算案を巡り、2月25日、自民、公明両党と日本維新の会は、高校授業料の無償化や社会保障改革について党首間で合意したと発表。3月4日に行われた衆議院本会議で予算案と税制改正関連法案が賛成多数で可決され、衆議院を通過しました。
予算案は参議院に送付してから30日で自然成立するという憲法の規定があり、4月2日までに成立することになります。
高校授業料の無償化が実現すれば、2025年度から全世帯を対象に国公私立を問わず就学支援金が支給され、2026年度から私立高校に通う場合の就学支援金の支給上限が引き上げられる予定です。
今回の高校の授業料無償化のポイントとFPとして気になる点をまとめてみたいと思います。

高校の授業料無償化の改正のポイント
高校の授業料無償化は、「就学支援金制度」を拡充する形で行われます。
返済不要の就学支援金制度は、2010年度から実施されており、国から都道府県や学校を経由して授業料に充当されています。

まず現行制度を整理しておきましょう。
現在は、公立高校・私立高校を問わず、世帯年収910万円未満なら年11万8,000円、私立高校の場合は、世帯年収590万円未満なら年39万6,000円(全日制)を上限に支給されるというしくみです。
これらの年収基準は一つの目安であり、世帯構成等で変わってきます。
例えば、両親が共働きで子ども1人(高校生)の場合は年収約1,030万円までであれば11万8,000円、年収約660万円であれば年39万6,000円が支給されます(※給与所得の所得はなし。両親の収入は同額と仮定)。

今回の改正は、まず2025年度から「910万円」の所得制限を撤廃。すべての家庭が支援を受けられるようになります。
続いて2026年度から「590万円」の要件も外され、支給限度額が現行の39万6,000円が、私立高校の授業料の全国平均45万7,000円に引き上げるというものです。

東京都、大阪府は先行して高校の授業料無償化を実施
高校の授業料無償化については、国に先行する形で、2024年度から東京都が所得制限を撤廃し、都立高校・私立高校ともに実質無償化にすると発表。同年度から、大阪府も段階的に無償化を進めるとしています。
東京都の場合の条件は、保護者が東京都内在住であること。東京都外の私立高校に通っても対象となります。
筆者のご相談者の中には、千葉県や埼玉県等にお住まいで、東京都内の私立学校に進学あるいは進学予定のお子さんを持つご家庭も少なくありません。逆に、東京都内から都外への進学もあり得ます。
同じ高校に通うのに、住んでいる場所によって家計の負担に差が生じるわけですから、不公平だと感じる生徒や保護者の方もいたはずです。
実際、「ほかのきょうだいの教育費やこれからの大学進学を考えると、高校の進学先は県内の公立高校に絞らざるを得ない」という保護者の声も聞こえてきました。
今回の改正によって、格差が解消され、お子さんの進学の選択肢の幅が広がるのは歓迎すべきことでしょう。

授業料は無償化されても私立高校はそれ以外の費用が高い
とはいえ、FPとしては、「どうせ無償化されるなら私立高校に…」とばかりに、私立への進学熱が高まることに対する懸念もあります。
新聞報道などでは、無償化によって公立高校の志願者数の低下や私立高校の授業料の値上げを招く可能性も指摘されていますが、そもそも、公立高校よりも私立高校の費用負担が重いのは授業料だけに限定されません。
文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」によると、学習費総額は、公立高校の場合59万7,752円。私立高校の場合103万283円と1.7倍もの差があります。
実際に、お子さんが私立高校に進学された保護者のお話を伺うと、「想像以上だった」と言います。
パンフレットに書かれてあった施設設備費、厚生費、後援会費用は覚悟していたものの、校外研修やパソコン、タブレット購入費などのお知らせがくるし、部活に入れば、お揃いのジャージやTシャツ、バッグ、遠征費等々、数十万単位の出費に驚いたそうです。

高校の先にある大学進学費用に備える
そして、子どもの教育費負担で最大かつ最後の難関は大学進学費用です。
もちろん、最終的には子どもの学力や希望、家庭の経済状況を勘案して進路を選択することが第一ですが、まとまったお金がかかることは確実です。これをクリアするためにも、無償化に惹かれて安易に私立高校を選択せず、授業料以外の諸費用をしっかりと確認し、家計への影響を十分に検討する必要があります。
筆者は、スカラシップアドバイザーとして高校に奨学金の説明をする機会があり、その際、学校の先生から必ず伝えてほしいと言われるのが、貸与型奨学金が「借金」であるという点です。
生徒も保護者も、進学を希望する大学のレベルや偏差値、受験方法等にばかり目がいきがちで、お金のことは後回し。まあ、何とかなるし、用意できなかったら奨学金や教育ローンでまかなえば良いと楽天的に考える傾向が強いような気がします。
貸与型奨学金は子ども自身の負債、教育ローンは親の負債となり、それぞれの将来のライフプランに影響を及ぼします。
無償化された部分について、収入の高い家庭は塾や予備校の費用へと回し、別の格差が生じるというご意見もありますが、浮いた分を貯蓄し、大学進学費用に備えることもご検討ください。

黒田 尚子(くろだ なおこ)

CFP®認定者

1級ファイナンシャルプランニング技能士消費生活専門相談員資格

消費生活専門相談員資格

CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター

公開日: 2025年03月20日 10:00