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国民年金保険料の2年前納と毎月払いの金額差
国民年金保険料には前納割引制度があり、保険料を一定期間まとめて前払いすると割引が適用されます。例えば2年分をまとめて前払い(=2年前納)すると、毎月納付する場合に比べ約2年間で17,000円程度安くなります。これは、一度に多くの保険料を納付する負担に報いるための制度上のメリットであり、加入者にとってお得(経済的メリット)になるよう設定されています。前納割引制度の趣旨としては、割引によって加入者の負担を軽減しつつ、計画的納付の促進があります。まとめて納付することで日本年金機構側も徴収の手間が減り、未納や納付忘れの防止につながるため、制度上双方にメリットがある仕組みになっています。
●前納による割引額の計算方法
前納割引額は将来の保険料を前倒しで納めることによる時間的価値(利息相当分)を反映して設定されています。具体的には、年利約4%の複利現価法によって算出された額が割引額になります。簡単に言えば、各月の保険料を所定の期日より早く納付することで生じる利息相当分(年4%を月割りした利率)を割り引く形になっているということです。その結果、前納する期間が長いほど割引額も大きくなります(期間中の各月分について早く納めるメリットが積み重なるため)。例えば2年前納の場合は、対象となる24ヶ月分の保険料の合計から、この利息相当分を差し引いた金額が前納額となり、その差し引かれた分が「割引額」として表示されます。
計算式:前納割引額 = 毎月納付した場合の総額 – 前納した場合の納付総額
例えば令和7~8年度分2年前納(口座振替)では
令和7年度保険料17,510円×12ヶ月 + 令和8年度保険料17,920円×12ヶ月 – 2年前納額(408,150円) = 割引額17,010円 という計算になります。
前納割引額は一定の算定基準(複利計算による将来価値の割引)に基づいて決められており、公表される割引額自体がその計算結果となっています。
●割引額や前納額の公表場所と過去年度の事例
国民年金保険料の前納額や割引額は毎年度、厚生労働省や日本年金機構から公式に公表されています。厚生労働省は例年1月頃に翌年度の保険料額決定に合わせて前納額の報道発表資料を出し、日本年金機構の公式サイトにも詳細が掲載されます。例えば令和7年度(2025年度)の場合、2025年1月24日に厚生労働省のプレスリリースで次のように案内されました。
・ 6ヶ月前納:口座振替 103,870円(毎月払いより1,190円割引)、現金納付 104,210円(同850円割引)
・ 1年前納:口座振替 205,720円(同4,400円割引)、現金納付 206,390円(同3,730円割引)
・ 2年前納:口座振替 408,150円(同17,010円割引)、現金納付 409,490円(同15,670円割引)
これらの数値は日本年金機構の公式ウェブサイト内「国民年金保険料の前納」ページや「2年前納制度」案内ページにも掲載されており、過去の年度分についても各年度の発表資料で確認できます。公的機関(日本年金機構や厚生労働省)のサイトではこのように具体的な前納額と割引額が毎年度示されているため、信頼できる情報源として参照可能です。
●将来の保険料改定時における前納と毎月払いの影響の違い
国民年金保険料は経済指標等に基づき毎年度見直されており、近年は毎年わずかずつ引き上げ傾向にあります(例:国民年金保険料は令和5年度16,520円→令和6年度16,980円→令和7年度17,510円)。これらは厚生労働省のプレスリリースで前納額が発表されると同時に、翌年度の国民年金保険料も発表されます。
例えば、2025年1月24日に2年前納額が408,150円と発表されましたが、同時に令和8年度の国民年金保険料も17,920円と発表されています。すなわち、令和7年度(2025年度)と令和8年度(2026年度)の月払い額が確定しているので、2年前納した後に2年目の月払い額が突然引き下げられることはなく、前納していた人が損をするようなことはありません。
また、前納後に状況が変わった場合は所定の手続きにより残月分が返還される仕組みがあります。例えば、途中で会社員になる場合など、厚生年金加入等により国民年金の納付義務がなくなった場合には未経過分が還付されます。ただし、手続きが必要となる点には留意が必要です。
●余裕のある人ほど有利な制度となっている
前述のとおり、制度上年利約4%の複利現価法によって算出された額が割引額とされているということで筆者も令和5年度以降の割引率を計算してみましたが、正確に4%と確認できました。執筆時点において、銀行預金の金利は0.325%(※1)ですので、銀行預金に寝かせておくくらいであれば、前納した方が12倍以上の金銭的メリットがあることになります。
近年はNISAで運用する人も増えていますが、定期的に年4%以上の利回りを得られる人にとっては、2年前納するよりはNISAで運用し、そこから毎月支払う方が金銭的メリットは大きくなります。今年、20歳になられた方は60歳になるまで40年間、国民年金保険料を納めることになります。この間、運用利回りが4%を上回ることが難しい時期もあるでしょう。そのような場合は、2年前納という方法を思い出してみてください。
とはいえ、20歳で約40万円を支払える方はさして多くないでしょう。その場合は、1年前納や半年前納という選択肢が設けられています。これらはみな余裕のある方が取り得る選択肢であって、この恩恵を利用できる方が多くないことは事実です。「余裕のある人がより得をする制度設計」ともいえるでしょう。
制度の仕組みを知って、自分のライフスタイルや家計状況に応じた選択をしていくことが大切です。
※1 みずほ銀行スーパー定期2年
塚原 哲(つかはら さとし)
CFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所®長野 所長