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忍耐強い”投資家であれ

 金融庁は今年(2025年)2月に2024年12月末時点の「NISA口座の利用状況調査(令和6年12月末時点・速報値)を公表しました(対象はNISA取扱全金融機関)。口座数は 2,560万口座となり、1年間に17兆円超の上場株式や投資信託がNISA口座で購入されたことになります。そして、3月19日には、日本証券業協会がNISAの買付額が政府目標の56兆円を達成したと発表しました。「資産所得倍増プラン」で掲げられた2027年までの目標額に対して、3年弱前倒しで到達したことになります。

●残高が積み上がるかがカギ
金融庁の調査ですが、速報値なので、2024年末のNISA口座数と買付額しか数値が公表されていません。買付額が順調に増えるのはよいことですが、NISA口座で購入した投資信託などを長期で保有し続けられるか、残高が積み上がっていくかをみていく必要があるでしょう。

一般NISAがスタートした2014年から2023年12月の間に、投資家は上場株式や投資信託を累計で30兆7049億円以上買い付けています。ところが、一般NISA口座の2023年末の残高は13兆円程度と増えるどころか、減っています。
一般NISAは非課税期間が5年と短いこともあり、「短期の売りを誘発しやすい」「非課税期間終了時に新たなNISA非課税枠に移す(ロールオーバーする)ことはできるが、手続きを忘れると課税口座に払い出される」「制度導入当初、分配金をたくさん払い出すタイプの投資信託が積極的に販売されていた」といったことが背景にあるものの、厳しい数字です。

つみたてNISAはどうでしょうか。制度が始まった2018年から2023年末までの買付額の累計は4兆9149億円。対して、2023年末の残高は5兆2106億円。こちらも、良好な相場環境にもかかわらず、残高はあまり積み上がっていません。

NISA制度では、口座数や買付額が倍増しても、長期的に残高が積み上がっていかなくては、個人の長期の資産形成にはつながりにくいのではないでしょうか。先日、ある投資信託の運用報告会を視聴していたところ、運用担当者の方が「インデックス投信でも、アクティブ投信でも、長期で持ち切れるかどうかが(資産形成の)カギ」というお話をされていましたが、その通りでしょう。

●NISA、2年目は何を?
取材やセミナーで「NISA、2年目は何を買ったらよいですか?」という質問をいただくことが結構あります。オンラインで動画をみていると、2024年は「インド株投信を加えてもよいです」と言っていたり、2025年に入ると「半導体は魅力的。個別株を直接買ってもいいし、半導体セクターETFやファンドでもよい。他の投信から乗り換えてもOK」いった提案がなされていたりします。

モーニングスター・ジャパンのレポート「NISA 概要レポート 2024年 年間」の中にはこんな記述があります。
「(2024)年前半に人気を集めた半導体関連やインド株ファンドは、第4四半期には上位から姿を消した。これらのファンドの中にはインベスター・リターン(注:投信を保有する投資家のリターンのこと)がトータル・リターンを大きく下回るケースも見られ、短期的なトレンドを追いかける投資行動が裏目に出るリスクを示唆している」

2年目になるから何かする(商品を変更するなど)という発想ではなく、目的や運用する期間、取れるリスクなどに応じて、運用方針・購入する商品などを決め、あとは淡々と運用を続けることが大事です。そういう意味でも、(心がヘンに揺れないために)投資方針書などは作っておくことよいかもしれません。

●お金の行き先を意識できる”手触り感”と対話
皆さんはどの運用会社の、どの投信なら長く持ち続けることができるでしょうか。例えば、株式に投資する投資信託であれば、過去のリスク・リターンといった数値に加えて、投資信託という器を通じて、どんな地域の、どんな会社にお金を投じているのか。どういう基準でその会社が選ばれているのか、中身はどうなっているのか、などを理解しておくことは大切です。
そのためには、保有する投信で丁寧な情報開示(目論見書、運用報告書、月次レポート)が行われていたり、受益者との継続的な対話が行われていたりすることがのぞましいです。

短期的には投資信託の基準価額は大きく変動することもあります。「人気だから」「SNSで話題だから」だけではなく、自分なりに調べて、納得した上で、保有し続けられる投信を選んで資産形成を続けていきたいものです。 
 

竹川 美奈子(たけかわ みなこ)

ファイナンシャル・ジャーナリスト

LIFE MAP,LLC代表

 

公開日: 2025年04月17日 10:00