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フラット35が7ヵ月ぶり低金利!今こそ固定に変えるチャンス?
この1.820%という水準は、2024年10月以来7カ月ぶりの低さです。1.820%より低かった時期を探すと、2023年9月(1.800%)までさかのぼる必要があります。つまり、ここ最近の約1年半では最も低い水準に戻ったといえるでしょう。
フラット35の適用金利が下がった主な理由は、適用金利の決定に大きく影響している長期金利(10年利付国債の利回り)の低下が挙げられます。2024年中はおおむね1%を切る水準で推移していた長期金利が、11月あたりから1%を超えてきて、2025年3月には1.6%近くまで上昇しましたが、トランプ関税などによる先行き不透明感からの株価急落を受けて長期金利も急低下し、一時1.1%程度まで下がったのです。
このような長期金利の動きは、日銀による追加利上げが少し遠のいたとの予想を織り込んだものだと考えられます。とはいえ、12月以降4カ月連続で前年同月比3%を超える物価上昇が続いている現状を考えると、これ以上インフレを加速させないための利上げが行われる可能性は依然として高いと言えるでしょう。
実際に、短期金利の影響を強く受ける変動金利型の5月の適用金利は、最も低いところでも0.5%台。比較的低めの適用金利を提示しているところでも0.6~0.7%台が主流です。数カ月前まで最も低いところで0.2~0.3%台だった変動金利型は、利上げの影響を受けて上昇してきています。
今後さらに利上げが行われれば、変動金利型の適用金利はもう一段上がっていくでしょう。とすると、今のうちに固定金利型に借り換えたほうがいいのか、変動金利型のままでいいのか、悩む人もいるかもしれませんね。なので、今回は、住宅ローンの金利タイプの選択に関するシンプルな考え方をここにまとめておきましょう。
まず、将来の金利変動リスクを取ってでも、総支払額が少なくなる可能性に賭けたい人は、変動金利型を利用してもよいでしょう。
適用金利が少し上がったといっても0.6~0.7%台で借りられるなら、住宅ローン減税の控除率0.7%と同程度。つまり、このまま金利水準が変わらないなら、住宅ローン減税を受けている間は実質ゼロ金利で住宅ローンを借りていることになります。将来的に金利が上がったとしても、2%以上になるまでは固定金利型よりも有利な状態が続き、多少2%を超える期間があっても総支払額では有利になる可能性があります。
ただし、変動金利型を利用し続ける場合は、未払い利息の発生リスクを十分に認識し、金利上昇によって返済額がどのくらい増えるのかを試算したうえで、いつでも繰り上げ返済を実行できるようにしておくなど、備えを万全にしておくべきでしょう。また、毎月の変動金利型の金利水準をチェックし、自分のローンよりも低い金利を提示しているところにいつでも借り換えできるようにしておくことも重要でしょう。
一方、金利変動リスクを取りたくない人、とにかく安全安心な返済計画にしたい人は、フラット35のような全期間固定金利型を選ぶべきでしょう。ちなみに、フラット35であれば、家族構成や住宅性能などに応じたポイント制で、当初5年間の適用金利が最大1%引き下げられる可能性もあります。
当初5年間とはいえ、1.820%から最大1%の引き下げが受けられると、適用金利は0.820%まで下がりますので、現在の変動金利型とあまり変わらない水準です。これからマイホームを取得する人は、事前に要件等をしっかりチェックしておきましょう。
また、現在、変動金利型のローンを返済中で、今後の金利上昇による返済額の増加が不安で仕方がないという人は、早めにフラット35などの全期間固定金利型に借り換えてしまったほうが安心です。目先的な毎月返済額は増えますが、その増えた分を安心料みたいなものだと考えられるなら問題ないでしょう。残りの返済期間が30年近くある人なら、今後の金利上昇の度合いによっては、総支払額ベースでも固定金利型のほうが有利になる可能性もあります。
もちろん、今後20年30年の金利動向を正確に予測することは誰にも不可能です。なので、結果として変動が有利なのか固定が有利なのかは、完済のタイミングが来るまでわかりません。だからこそ、リスクがあったとしても有利さを追求したいのか、結果として不利であったとしても安全性を追求したいのかといった観点で変動か固定かを選択するのが無難ではないかと思います。
菱田 雅生(ひしだ まさお)
CFPファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所®長野 提携講師
1級FP技能士
1級DCプランナー、
住宅ローンアドバイザー
確定拠出年金教育協会 研究員
アクティブ・ブレイン・セミナー マスター講師