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統計に反映されない物価上昇に注意

今回は皆さんへ質問から始めます。「最近コンビにエンスストアのおにぎりを食べて、おにぎりが小さくなったと思われますか?」、○×で答えてください。正解を直ぐに記載してしまっては質問(問題)にならないのですが、答えを記載しないとコラムが成り立たないためご容赦願います。
正解は「〇」です。筆者はこの質問をセミナー等で何度も行い、述べ7~800人に回答してもらっていますが、正解者はわずか2人だけです。おにぎりが小さくなった背景は、おにぎりの原材料となるお米が値上がりしているからです。このお米は普段私たちが購入しているお米とは異なり、コンビニエンスストアや外食産業などが使用する「業務用米」のことです。来年から国の減反政策が変更になることで、業務用米を生産する農家が減少するため、業務用米の価格上昇が既に始まっていることがその要因だそうです。おにぎりが小さくなったとはいえ、その大きさは5グラム前後の減少に過ぎないことから、大多数の人が気づかないわけです。企業努力の賜物と言えるのですが、反面では企業は値上げをして売れなくなることを警戒しているからです。

価格こそ変わりませんが、おにぎりを小さくしたのですから、形を変えた値上げと言い換えられます。このような値上げを「実質値上げ」と呼んでいますが、実質値上げはそのほとんどが「消費者物価指数」に反映されないことを理解しておかなければなりません。同指数が本格的に上昇しないことから、依然として「デフレ」は続いているのでは?日本銀行が目標とする「2%の物価上昇」は実現不可能等々、物価は上がっていないと言われ続けています。しかし、企業努力により実質値上げが度々行われている以上、事、物価に関しては生活実感を重要視して家計管理を行うべきと思われてならないのです。
古くは、リーマンショックが起こった2008年前半、原油価格が高騰したことを覚えている人も多いはずです。当時、離島ではガソリン価格が1リットル=200円前後まで高騰したのですが、原油高騰によりさまざまなモノが実質値上げされたのです。「竹輪の穴が大きくなった」「蒲鉾の大きさが小さくなった」「納豆のパックが小さくなった」等々。竹輪、蒲鉾は漁船の燃料が高騰したことによるもの、納豆はパックの原料高騰したことによるものでした。このように企業努力により、統計データに反映されない実質値上げは都度行われてきているのです。物価上昇の有無は消費者物価指数という統計データに現れない事象があるため、先に述べたように生活実感を重要視しましょうとなるわけです。

そこで皆さんに提案したいのは、生活実感を物価判断の基準にするために何か1つでいいですから価格の推移を追って欲しいのです。過去にこのコラムで述べましたが、筆者はいくつかの価格の推移を追っています。その1つがインスタントコーヒーです。ネスカフェゴールドブレンドの価格をずっと追っているのですが、特売を行う回数が減っただけではなく、現在の容量は90グラムと1割減(実質値上げ)となっていることからかなりの値上げです。さらに感心するのは、同コーヒーはかつて見かけなかった150グラム、記憶が正しければ120グラム瓶のコーヒーを販売しているのです。これなどは価格を追いにくくしている妨害では?と言いたくなりますが、見方を変えれば実質値上げをより消費者に悟られないようにしているのだと思われるのです。このような統計のアヤ、企業努力があるということをお忘れなく。


深野 康彦(ふかの やすひこ)
AFP ファイナンシャル・プランナー
有限会社ファイナンシャルリサーチ 代表

公開日: 2017年10月26日 10:00