アシューマブルローンについて考える
2017年4月より住宅金融支援機構の【フラット35】において、認定長期優良住宅を対象としたアシューマブルローンが導入されました。「アシューマブル」とは「引受可能」という意味があり、債務承継型ローンと紹介されています。アシューマブルローンの本当のメリットと、利用するための手続きを確認してみましょう。
アシューマブルローンの仕組みとメリット
アシューマブルローンはその名のとおり、債務が継承できるローンで、その効果を得られるのは、ローンを組んで購入した住宅を売却する際です。具体的には、売却金額がローン残高より高い場合は、買主から売主に売却金額からローン残高を引いた額が支払われ、売却金額がローン残高より低い場合には、売主から買主にローン残高から売却金額を引いた額が支払われます。ローンはそのままの条件で次の住宅購入者に引き継がれますから、住宅売却時にどれだけ金利が上昇していても、その物件の購入者は超低金利時に借りた以前の住宅ローンの金利をそのまま引き継いで返済できます。つまり、金利上昇局面では購入者側にメリットがあるローンといえます。
たとえば3,400万円の物件を購入するため、頭金を400万円支払い、物件価格の9割以内になる3,000万円を【フラット35】(アシューマブルローン)で、金利1.59%、35年返済の条件で借りた場合、月返済額は約9.3万円です。さて、この物件を10年後に、その時点のローン残高2,306万円で売却するケースを考えてみましょう。その間に世の中の金利が上昇し、適用金利が5%になっていたとします。購入者が全額をローンにした場合、35年返済における月返済額は約11.6万円で、35年間の総返済額はおよそ4,872万円になります。25年返済にすれば総返済額は4,050万円で済みますが、月返済額は約13.5万円にもなり大きな負担となります。しかし、最初に物件を購入した方がアシューマブルローンを利用しており、債務継承できる場合では、金利1.59%の住宅ローンの返済を引き継ぐことができ、購入者は約9.3万円を25年返済すれば良く、総返済額は2,790万円で済むのです。つまり、購入者からみると、アシューマブルローンではない他の同額の物件と比べ、総返済額では桁違いに安く購入できたということになり、その差は債務継承のタイミングに世の中の金利が上昇していればいるほど大きくなります。最初の住宅購入者からみると、借りたローンがアシューマブルローンだったことにより、圧倒的に有利な条件で物件の売却を進めることができるのです。
アシューマブルローンの利用の仕方
アシューマブルローンの利用によるポイントはたった2つ、(1)【フラット35】をアシューマブルローンの取り扱いのある金融機関で申し込むこと、(2)購入する建物は認定長期優良住宅であることです。
(1)アシューマブルローンの取り扱い金融機関
平成29年10月1日時点で、全国で23の銀行、信用金庫、モーゲージバンクが扱っています。特にモーゲージバンクはお住まいの地域に関係なく利用できるので、すべての方が利用できるといっても良いでしょう。申し込み方法は、通常の【フラット35】と同じですが、金融機関によって、アシューマブルローンの内容を確認したことを証明する書面の提出が必要な程度で、面倒な手続きは一切ありません。
(2)認定長期優良住宅
長期優良住宅の性能を有するだけではなく、所管行政庁により認定を受ける必要があります。住宅会社では「長期優良住宅の認定基準を満たしています」と表現されることがありますが、認定基準を満たしているだけでなく、所管行政庁に認定の申請をして認定を受ける必要があるというところがポイントです。
アシューマブルローンは、取り扱う金融機関が少ないという現状もあり、あまり聞き馴染みがないかもしれません。しかし、将来の売却時に大きなメリットになる可能があります。なお、住宅購入時に借りる【フラット35】をアシューマブルローンにするデメリットは一切ありませんから、将来、住宅を売却する可能性のある方は積極的に利用を検討してみてはいかがでしょうか。
市川 貴博(いちかわ たかひろ)
CFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野 主任研究員
日本FP協会静岡支部 幹事