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株価はバブルか否か

日経平均株価は1996年のバブル崩壊後の高値、2万2,660円を更新しました。更新する以前にも節目を超える度に、たとえば21年○ヵ月ぶりの高値などと言われ続けてきました。株価が上昇してポジティブな状況であることに変わりはないのですが、米国や欧州の株価は史上最高値更新などと頻繁に言われると、日本株のポジティブさは半減するようです。そこで筆者は「日本の株価は21世紀に入っての最高値を更新中」などと少し表現を変えるようにしています。ちなみに、このコラムを書いている時点の日経平均株価の水準は、1992年1月の水準まで戻しています。やや期間が異なりますが、1991年末と比較した株価は、米国株は7倍、欧州株は4倍の上昇ですから、日本株は四半世紀経っても道半ばという状況です。
道半ばとはいえ、21世紀に入って、日経平均株価は最も高い水準まで上昇しているのですから、現状の株価はバブルなのか否かということです。  専門家の株価見通しは強気意見が目白押しで、中には3万円台へ上昇する相場が始まった、バブル期の史上最高値である1989年12月29日の3万8,915円(終値)を更新するという意見も出ています。そんな強気見通しが増える中、株価はバブル相場に入ったのではないか?という声を聞く機会も増えたような気がしてなりません。残念ながら「バブル相場か否か」は相場が弾けてみてわかることと言われるため、現時点でバブル相場なのか否か。はたまたバブル相場であれば、今は何号目に位置しているのかは皆目わかりません。わかれば苦労しないというものですが、バブル相場は最後の上昇局面が最も上昇スピードが速いと言われます。株価チャートで表せば、チャート(ローソク足)が立つという形になりますが、それとて簡単に見分けがつくものではありません。それでは、バブル相場を見分ける方法はないのかと言えば、筆者は新たな「投資尺度」、あるいは「価値尺度」などと言い換えられる指標的なものが出てくるのかに注目しています。

たとえば、1990年までのバブル相場では「Qレシオ」なる指標が登場しました。企業の資産を純資産に含み資産を加えて計算するもので、土地(資産)持ち会社の株価を正当化するための投資尺度でした。2000年前後のITバブルは、「ドットコムバブル」と言われ、会社名やHPなどのアドレスに「.com」と付くだけで株価が上昇したのです。2008年のリーマンショックが起きる前の「住宅バブル」では、「サブプライムローン」や「プライムローン」なる言葉が乱れ飛んだのは記憶に新しいところです。サブプライムローン、プライムローンという言葉は、米国の住宅ローン業界などでは当たり前だったのかもしれませんが、住宅バブルが崩壊(崩壊前後)したときに私たちはその言葉を知ったはずです。このようにこれまで見たことも、聞いたこともほとんどない言葉(尺度)が相場に流布され、頻繁に使われる(当たり前に使われる)ようになったら要注意と思っています。今のところ、そのような言葉が流布され始めていないようですが、仕事柄お会いする専門家の方々に価値尺度が発生していないか質問している状況です。発生していたらもちろんご報告しますが、最後に景気良い格言を一つ。株式市場には「半値戻しは全値戻し」という格言があります。日経平均株価の最高値は1989年12月29日の3万8,915円、バブル崩壊後の最安値は2009年3月10日の7,054円で、その中間値は2万2,985円です。半値まで戻せば、今後、もとの水準まで戻る勢いがあるという意味なので、皆さんがこのコラムを読むときに中間値を超えていれば、数年中に日経平均株価は史上最高値更新となっているかもしれませんね。


深野 康彦(ふかの やすひこ)
AFP ファイナンシャル・プランナー
有限会社ファイナンシャルリサーチ 代表

公開日: 2017年11月23日 10:00