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不要な「がん情報」を捨てる技術

最近、がんに関するセミナーのご依頼を受ける際、「がん情報の正しい入手方法について聞きたい」というご要望をいただくようになりました。
たしかに、インターネットの普及によって、巷にはがん情報があふれ、いかようにでも取ることができます。しかし、これらが全て正しい情報とは限りません。
とりわけ、これで「がんが完治した」系の健康食品やサプリメントなどの補完代替医療や、怪しげな(!)エビデンス(科学的根拠)のない自由診療を推奨するクリニックなどなど。
多くの人はがんと告知されると、一般的な標準治療を選択するでしょう。しかし、それ以外の選択肢を選ぶ患者も一定数存在するのです。
もちろん、その治療で完治すれば良いのですが、手の施しようがない状態になって初めて、がん診療連携拠点病院に担ぎ込まれるというケースも珍しくありません。


「エビデンス(科学的根拠)」がある情報とは?
筆者のようながんサバイバーにとって「エビデンスがある」とは、①その医療行為等によって余命の延長が期待できるか、②痛みが緩和されたか、の2点に尽きます。
しかし、例えば、がん患者に良く利用される健康食品(アガリクス、プロポリス、サメ軟骨、メシマコブなど)などの補完代替医療の多くは、その有効性が検証されていない、あるいは有効性が確認できていません。つまりエビデンスがないのです。
ただし、「エビデンスがない=効果がない」ということではありません。効果があるかどうか、有害なのか無害なのか、わからないということです。

補完代替医療の代表格といえば、前述の健康食品やサプリメントが挙がりますが、それ以外にも、ヨガやピラティスなどの運動療法、ハーブや鍼灸、マッサージ療法など多岐に渡ります。近年では、効果を立証する臨床試験も行われており、QOL改善効果や抗がん剤・放射線治療等の副作用軽減効果が一部証明されているものもあるようです。
ただ基本的に、これらはすべて公的保険適用外。費用は全額自己負担で、その効果のほどは自己責任が伴うということを忘れてはいけません。


「エビデンス(科学的根拠)」がある情報の取り方
さて、そこでがん患者にとってエビデンスのある情報の取り方についてです。
国立がんセンター中央病院が、2013年12月に、がんに罹患したことのない20~60代の男女568人にネット調査を実施。がんになったとき、どこから情報を収集するか尋ねたところ、「インターネット」と回答した人が最も多いという結果になりました。ということで、ここでは、インターネットで情報を収集することを前提に考えてみます。
インターネット上の情報が「正しい」かどうか見分ける方法の1つに、アメリカ医師会雑誌(JAMA)に掲載された「JAMA(the Journal of the America Medical Association)指標」があります。
JAMA指標の基準は以下の4つ。これらが明確に明記されているかを判断基準とするわけです。

① Authorship・・・著者、寄稿者、所属、資格(誰が書いているのか?)
② Source・・・引用文献などの情報元、コピーライト情報(情報元や引用文献はなにか?)
③ Disclosure・・・サイトの所有者、出資者、広告政策、利益相反(どんな目的で、何のために?出資者は誰?広告目的か否か?)
④ Currency・・・最終更新日(最後の更新日は?

とはいっても、一般の方が、これらを一つ一つ検証するのは大変な労力と時間が必要です。そこで、米国では、1995年からインターネット上の医療情報の質や信頼性を保証するために「HON(Health on the Net Foundation) code」という認証コードを設けており、一定のガイドラインをクリアした信頼性のおけるサイトには認証ロゴを提供しています。

日本でも数少ないですが、HON codeを取得しているサイトがありますので、是非チェックしてみてください。

これからは情報を取るよりも捨てる方が大事
がんは「情報戦」と言われるくらい、自分や家族にとって有益な情報を入手できるか否かが命綱となります。
その一方で、有害な、不要な、古い情報を捨てることも重要だと痛感しています。しかし、この見極めが難しいのです。なぜなら、それが自分にとって有益かどうか判断するための情報も必要だからです。そして、情報提供する場合も注意が必要です。その患者が、罹患直後なのか、治療中なのか、経過観察中なのか等々によって、必要な情報は異なります。情報提供する際は、まずは、現状把握をして、患者さんが情報過多にならないよう、適切かつ適度なタイミングで情報提供することを心掛けてください。


黒田 尚子(くろだ なおこ)
CFP®認定者
1級ファイナンシャルプランニング技能士消費生活専門相談員資格
消費生活専門相談員資格
CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター

公開日: 2017年12月07日 10:00