つみたてNISA、最も利用価値が高い人は?
2017年10月1日から「つみたてNISA」の申込みが開始されました。実際のスタートは2018年1月からですが、一般NISA、iDeCo(個人型確定拠出年金)、つみたてNISAのどれを利用したらよいのか迷う人も多いことでしょう。そこで今回は、「つみたてNISA」の利用価値が最も高い人を考えてみたいと思います。
つみたてNISAの利用価値が最も高い人はフリーターなどを含む、自営業、正確には「国民年金」に加入する第1号被保険者と言い換えたほうがよいかもしれません。第1号被保険者には、終身で確保できる年金は「国民年金」しかありません。昨年あたりから人生100年時代などと言われていることから、資産の山を高く築くことも然ることながら、一方で終身年金を厚く確保することが長生きに備えるには重要と考えられるからです。
その終身年金、勤労者は国民年金と厚生年金の2階建てで準備されますが、第1号被保険者は国民年金の1階建てのみ。仮に国民年金だけの加入であれば、40年の満額加入でも月6万6,000円、夫婦合算しても13万2,000円に過ぎないのです。勤労者と同等にするには、まず終身年金を2階建てにする必要があると思われます。
iDeCoも制度上は終身年金で受け取ることができますが、終身年金を扱っている運用管理機関(金融機関)は非常に少ないのが現状です。そこでiDeCoではなく「国民年金基金」を優先して利用すべきと考えます。国民年金基金もiDeCoと同じように掛け金は全額所得控除を利用できるうえ、公的年金等控除も利用でき節税という側面で違いはありません。ただ、国民年金基金は終身年金にまず加入する(1口目)ことが義務付けられており、2口目以降も終身年金を選ぶことができることから、人生100年時代に即した制度なのです。
また、iDeCoで必要になる口座管理料もかからないうえ、iDeCoで用意されている預金などの元本確保型商品よりも相対的に高めの利回りを得ることもできます。勤労者より薄い終身年金をまず国民年金基金で確保して、勤労者並みに終身年金を2階建てに厚くする、それでもiDeCoを利用する掛け金枠が残っていれば利用を考えればよいのです。
第1号被保険者のiDeCoの掛け金は、国民年金基金と合算して月6万8,000円までです。この掛け金全額を国民年金基金にしても良いと筆者は考えています。勤労者が毎月支払っている厚生年金は労使折半。仮に毎月3万円負担しているならば、勤務先の負担分と合わせて6万円を厚生年金保険料として支払っていることになるからです。毎月6万8,000円の上限近くまで国民年金基金に支払うことは、高額の掛け金を負担しているように見えますが、勤労者と比較してもそんなに高額とは言えないことが理解できるはずです。
勤労者並みの2階建ての終身年金を確保できたら、次に「つみたてNISA」を活用します。公的年金、国民年金基金は共に物価の上昇に弱い制度です。インフレリスクに備えるためにつみたてNISAを活用するのです。国民年金+国民年金基金で終身年金の確保、そこにつみたてNISAをプラスすることで3階建てにし、第1号被保険者が老後に備えるのに適した仕組みとなります。ただし、第1号被保険者であっても若年層の場合は、無理に3階建てにする必要はありません。国民年金基金をプラスする2階建てで充分で、それも無理して掛け金を多くする必要もありません。国民年金基金は途中で掛け金を増額することが可能なうえ、若年層は最も遠い老後を優先して備えるよりも、まずは近い将来のライフイベントの資金準備を優先すべきだからです。
深野 康彦(ふかの やすひこ)
AFP ファイナンシャル・プランナー
有限会社ファイナンシャルリサーチ 代表