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少額短期保険を知ろう

 

2017年3月期は、民間生命保険会社の保険料収入が全体で9.7%のマイナスとなったのに対し、少額短期保険の保険料収入は12%の増加となりました。今回は、裾野が広がりつつある少額短期保険について取り上げます。

■少額短期保険の概要
少額短期保険とは、保障額が一定の範囲に制限された制度で、2005年4月に成立した改正保険業法によって誕生しました。
取り扱える商品の保障限度額は、入院保障で80万円、病気死亡で300万円となっており、損害保障分野でも最高1,000万円までと定められています。また、保険期間についても生命保障分野で1年、損害保障分野で2年が上限となります。そのため、メインの保障というよりも「不足しているニッチ分野を補足する保障」として位置づけられます。実際、従来の生命保険会社や損害保険会社では扱っていないタイプの商品が注目されています。

■少額短期保険の取扱商品
少額短期保険で扱われている商品は、次の4種類に大別できます。
①火災や風水害などによる家財の損失を補償する「家財保険」
②死亡保障や入院保障などの「生命保険・医療保険」
③ペットの通院・入院・手術などを補償する「ペット保険」
④損害を被った際の被害額を補償する「費用保険」と「その他保険」

このうち、①家財保険が599万件と一番多く、契約全体の87%を占めています。不動産仲介会社等が代理店として取り扱うことで、これまでは忘れられがちだった借家人の契約が進んだことが一因のようです。②の例としては、実年齢ではなく健康年齢で契約できる医療保険があります。③ペット保険は、近年の需要が大きく伸びる中で、少額短期保険だけでなく民間損害保険会社も取り扱いを増やしています。

さらに、④費用保険・その他保険には、従来の保険会社では取り扱われになかったユニークな商品があります。
例えば、コンサートやイベントなどに行けなかった場合に、既に購入しているチケット代を払い戻してくれる商品や、賃貸住宅等で死亡事故が発生した場合に、家主が被る損害を補償する商品などです。
ちなみに、自宅等で誰にも知られず亡くなる孤独死が発生すると、亡くなった人の親族は遺品整理等が必要となりますし、家主側では原状回復等の費用がかさむことが考えられます。日本少額短期保険協会が公表した「第2回孤独死現状レポート」によると、残置物処理費用の平均額は196,436円、原状回復費用の平均額は338,375円となっています。

その他保険の中では、弁護士費用保険が注目されています。弁護士費用カバーする保険と言えば、自動車保障等に付帯されている特約が知られていますが、こうした特約では「日常生活の中で発生した法律トラブル」に関する弁護士費用まではカバーされないことが一般的です。近年、注目度の高まっている個人賠償責任保険・共済に加えて、いざという時の費用負担をカバーすることも検討しておきたいものです。また、建物に関連した補償として地震費用保険もあります。本来、地震保険は火災保険とセットで加入しなければいけませんが、少額短期保険では単独で加入できるのが特徴です。

■少額短期保険利用時の注意点
最後に、少額短期保険の注意点を確認します。まず、少額短期保険の支払保険料は、所得税や住民税を計算する際の保険料控除の対象となりません。また、保険会社の破たん時に契約者を保護する仕組みである保険契約者保護機構は、少額短期保険会社は対象外のため、契約している業者が破綻した際のセーフティーネットが整備されていません。

2017年12月現在、日本少額短期保険協会の登録業者数は96事業者にまで広がっています。
2017年3月期の保険料収入は815億円です。民間生命保険会社の年換算収入保険料28兆4,832億円や民間損害保険会社の合計元受正味保険料9兆101億円と比較すると、まだまだ規模の小さな分野ですが、保険や共済でカバーできない個人のリスク管理対策の選択肢として、今後の広がりに注目しましょう。


栗本 大介(くりもと だいすけ)
CFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野 主任研究員
株式会社エフピーオアシス 代表取締役

公開日: 2017年12月21日 10:00