国民年金の保険料免除制度と納付猶予制度
日本では20歳から60歳までの人はいずれかの公的年金への加入が義務付けられています。第2号・第3号被保険者になれない人(自営業者や学生、無職の人など)は、国民年金の第1号被保険者となり、定額の国民年金保険料(月額16,260円/平成29年度)を納めなければなりません。しかし、収入が少ないなどの理由で保険料の納付が難しい場合には、次の制度を利用することができます。これらの手続きは原則として住民票のある市区町村役場で行います。
ア.保険料免除制度(申請免除)
所得が少ないときに保険料が免除される制度です。(1)全額免除、(2)4分の3免除、(3)半額免除、(4)4分の1免除の4種類があり、本人および配偶者、世帯主の前年の所得(1月~6月申請の場合は前々年所得)を合計した金額などにより、どの免除になるかが決まります。
免除制度を利用している期間については、国民年金の国庫負担部分(平成21年4月分からは2分の1/平成21年3月までは3分の1)と、全額免除以外では保険料を払った分の老齢基礎年金がもらえます。
なお、遺族基礎年金や障害基礎年金については、免除を受けている間であっても保険料を全額納付している人と同じ金額の年金が支給されます(ただし、遺族年金・障害年金の保険料納付要件を満たしていることが条件)。
イ.保険料免除制度(法定免除)
障害年金を受けている人や、生活保護の生活扶助を受けている人などは、所得による審査がない法定免除となります。
ウ.納付猶予制度と学生納付特例制度
納付猶予は「本人と配偶者」の所得が一定以下(全額免除の基準とおなじ)の場合、保険料の支払いが猶予される制度です。同居する親(世帯主)に一定以上の所得があったとしても、本人(納付猶予では配偶者も)の所得が少なければ、この制度を利用できます。対象は、20歳から50歳未満の第1号被保険者です。
納付猶予を受けていても遺族基礎年金や障害基礎年金は免除なしの人と同額ですが、この期間に対応する老齢基礎年金額はゼロとなります。全額免除と納付猶予のどちらも利用できる場合には、全額免除を利用した方が、将来の年金額が増やせるという点で有利です。
エ.学生納付特例制度
学生納付特例は20歳以上の学生(大学、大学院、短期大学、高等学校、高等専門学校、専修学校及び各種学校、一部の海外大学の日本分校に在学する)で第1号被保険者となる人が利用できます。所得基準は半額免除と同じ基準で、本人の所得だけで判定されます。
手続きは住民票のある市区町村で行いますが、学生納付特例事務法人の指定を受けている学校であれば、在学する学校の窓口でも申請手続きができます。
納付猶予制度と同様に、学生納付特例制度を利用していても遺族基礎年金や障害基礎年金は免除なしの人と同額ですが、この期間の老齢基礎年金額はゼロとなります。
オ.失業等による保険料特例免除と納付猶予
60歳未満の人が失業した場合には、特例免除の対象となり、配偶者や世帯主の所得が保険料免除の基準に該当すれば、本人のそれまでの所得にかかわらず保険料免除を受けることができます。免除の種類や将来受け取れる老齢基礎年金額の水準、障害基礎年金や遺族基礎年金の金額は、ア.の「保険料免除制度(申請免除)」と同じです。
保険料を未納のままにしておくと、障害年金や遺族年金が受け取れない場合があるので、学生で20歳以上になったときや所得が少なくなったときには、必ず免除や納付猶予の手続きをしておきましょう。
保険料免除期間や納付猶予・学生納付特例期間に対応する老齢基礎年金額は、前述のように本来の年金額より少なくなります。しかし、この期間の保険料を追納することで、本来の年金額まで増やすことができます。追納が可能な期間は10年間ですが、3年度以前の分を納付するときには経過期間に応じた加算額が上乗せされます。
山田 静江(やまだ しずえ)
CFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野 研究員
日本FP協会埼玉支部 副支部長