1月から施行される「休眠預金等活用法」とは?
10年以上入出金などがまったくない口座の預金のことを「休眠預金」といいます。
推計では、毎年平均1,000億円にものぼるそうで、これらの預金は、全国銀行協会のガイドラインに沿って、各金融機関に利益金という扱いでストックされています。
数年前から、この休眠預金を有効活用できないかという議論は行われていたのですが、それがようやく法整備され、2016年12月9日に「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」(以下、「休眠預金等活用法」)として公布。2019年1月より施行されます。
これによって、今年1月1日以降の休眠預金は、限定された3分野(医療・福祉・健康)の社会的事業へ活用されることになりました。
「外貨預金」や「財形貯蓄」は休眠預金の対象外
この法律の対象となる休眠預金は、10年以上、入出金等の取引のない預金等で、普通預金以外に定期預金、貯金、定期積金など。
おもに、預金保険制度や貯金保険制度の対象となるものです(2007年10月1日の郵政民営化前に郵便局に預け入れられた定期性貯金は除く)。
外貨預金や財形貯蓄、マル優の適用対象となる預貯金は、含まれません。
休眠預金等とみなされれば、預金保険機構に移管され、貧困対策や障害者支援などの民間公益活動に活用されます。ただし、すぐに移管されるわけではなく、休眠預金になりそうな預金がある場合、金融機関から通知が届く予定です。
休眠口座の9割は、通知の対象外となる小口預金!
ただし、ここで気になる点がいくつかあります。
まず、通知は1万円以上の残高がある預金等のみ。1万円未満のものは対象外です。
これまでも、ほとんどの金融機関では、口座残高に関わらず、預金者に休眠預金となった旨の通知を行っていました。しかし実際に払戻しが行われる割合は、銀行等で4割程度、農漁協系統で2割程度だそうです。とくに1万円未満になると、手続きの手間や交通費などのため、払戻しを放置するケースも多いようです。
実は、休眠口座の約9割が、このような残高1万円未満の小口預金というデータもあり、1口座当たりの平均残高は6,500円となっています。
さらに、通知があるのは、登録されている住所へ郵送もしくは電子メールのアドレス宛てです。引っ越し等で住所変更した後、変更手続きを行っていなければ、通知は届きません。預貯金の引出しは、ATMで可能ですので、とくに住所変更の必要がなかったり、つい忙しくて手続きを忘れてしまっていたり。そもそも、どこの住所で登録されているのか忘れてしまったという人もいるのではないでしょうか?
「休眠預金」となっても引き出せる!
ただし、休眠預金として移管された後も、通帳やキャッシュカード、本人確認書類等を持参して手続きすれば、いつでも預金は引き出すことができます。
したがって、法律が施行されたといっても、私たちに手続き等が生じることありません。
とはいえ、この際、長年使っていない預金口座があれば、整理しておいた方が何かと安心です。
とくに、親が高齢の場合、預金口座の存在を家族に伝えていなければ、亡くなった後に引出しや名義変更ができず、非常に困ります。
使わなくなった口座は解約し、口座数を絞って自分や家族が管理しやすいようにしておくなど、できるだけ休眠預金を作らないようにすることが肝心です。
高齢化・未婚化で、休眠口座や未相続の資産など引き取り手のいない財産が増える!?
そして‘おひとりさま’も要注意!
預金者が生きている間は、引出しも可能ですが、亡くなった後は、相続人がいなければ、資産は国庫に帰属します。
未婚率の上昇などによって、休眠預金と同じく、引き取り手がいない未相続の資産も増加傾向にあり、法定相続人がおらず、国庫に帰属した額は、2015年度で420億円。10年で2.5倍に増えたといいます。
「ちゃんと管理しているから休眠口座なんてない!」と思っていても、進学や就職、転職、結婚、住宅購入などで、使わなくなった銀行口座の一つや二つは、誰でもあるハズ。
実は、筆者もそう思っていましたが、調べてみると、独身のときに作って、まったく使っていない銀行口座が4つくらい出てきました(銀行は同じでも支店が異なるなど)。
残念ながら、筆者の場合、すべて預金残高はゼロでしたが、もしかして、休眠口座を集めてみるとちょっとした臨時収入になるかもしれませんよ。
黒田 尚子(くろだ なおこ)
CFP®認定者
1級ファイナンシャルプランニング技能士消費生活専門相談員資格
消費生活専門相談員資格
CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター