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がん保険「診断一時金」の複数回支払いは、本当に使えるのか?

先日、ライフネット生命が、がん罹患者を対象に行った「がん治療経験者へのアンケート調査」(2018年1月)の結果を拝見しました。
その調査で、非常に興味深いと感じた結果があったので、ご紹介したいと思います。

それは、がん治療にともなう1年ごとの入院傾向について。
治療期間が5年以上の患者さんを対象に、「はじめてがん診断を受けてから、再発転移の治療も含め、1年ごとにおける『がん治療をともなう入院の有無』について教えてください」という質問に対して、「診断から1年後までに」入院したという人が、96%と非常に高い割合を占めました。
それに対して、「2年後」15%、「3年後」9%、「4年後」9%、「5年後」14%と、2年目以降の入院率が激減しています。
つまり、がんと診断された後、手術等で1年以内に入院する人は多いけれども、2年目以降、入院する確率はがくんと減るということです。
もちろん、調査人数が200名程度で、乳がん患者が約7割というデータの属性を勘案する必要はありますが、正直な感想は、「やはりそうだったか」と驚きと納得が半分ずつといったところです。

となると、気になるのは、がん保険の診断一時金が複数回支払われる商品に加入している人が、がんに罹患して2回目以降、給付金をもらえる可能性はあるのか?という点です。
複数回受け取れる給付金については、チューリッヒ生命「終身ガン治療保険プレミアム」のように「診断給付金」という同じ名称の給付金が複数回受け取れるパターンか、オリックス生命「がん保険Believe [ビリーブ]」のように、1回目は「がん初回診断一時金」、2回目以降は「がん治療給付金」というように別の給付金を受け取れるパターンに分かれます。

最近は、ほとんどの商品が、最初の診断給付金について、入院や治療などのイベントの有無を問わず「診断確定されたら」受け取れるとしていますが、2回目以降については、商品によってさまざまです。
ここで、2つの商品の2回目以降の診断給付金の支払い条件を約款から抜粋してみました。

・FWD富士生命「新がんベスト・ゴールドα」の場合
「前回の悪性新生物診断給付金の支払事由が生じた日から起算して2年を経過した日の翌日以後に、責任開始期以後の保険期間中に診断確定された悪性新生物の治療を直接の目的として病院または診療所において入院を開始したときまたは通院をしたとき」

・損保ジャパン日本興亜ひまわり生命「勇気のお守り」の場合
「がん診断給付金の支払事由に該当した最終の日からその日を含めて2年を経過した日の翌日以後に、新たにがんと診断確定されたとき(再発または転移したがんを含みます。)ただし、再発の場合、すでに審査確定されたがんを治療したことにより、がんが認められない状態(以下「治癒または寛解状態」といいます。)となり、その後再発したと診断確定されることを要します。」

いずれも支払い間隔については、「2年」と共通していますが、入院要件については、前者はアリで、後者はナシです。
要するに、後者の商品の場合、最初のがん告知から2年が経過すれば、入院しなくても、新たにがんが見つかったり、再発・転移等があったりすれば、また給付金が受けられます。
ただ、どちらかといえば、前者のように、2回目以降の支払い条件を、入院や治療等のイベントが有った場合と設定している商品が多いような気がします。
おそらく、「再発」や「寛解」といった状態の解釈は、医師でも判断が難しいところ。それをお客さまに正しく理解していただけるのか、という問題や、入院や治療の有無などであれば、明確でわかりやすいといった保険会社側の判断もあるのかもしれません。
ただ、お客さま側としては、「がん保険に加入していて安心と思っていたのに、肝心の保障が対象外で使えない」というのは非常にショッキングです。
もちろんこの場で、「診断一時金が複数回支払われる商品で入院を要件としているモノは使えない!」と断言するわけではありませんが、やはりがん保険や医療保険など、第三分野の商品をオススメする場合、今の医療等の実情を把握することが重要だとしみじみ痛感しました。
黒田 尚子(くろだ なおこ)
CFP®認定者
1級ファイナンシャルプランニング技能士消費生活専門相談員資格
消費生活専門相談員資格
CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター
公開日: 2018年03月15日 10:00