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標準利率が変わろうが保障(保険)選びの基本は変わらない

平均寿命の改善等を背景に、2018年4月より、11年振りに標準責任準備金の計算の基礎である「標準生命表」が改定されます。平均寿命や平均余命を知るための「簡易生命表」は見聞きしたことがあるかもしれませんが、「標準生命表」はあまり馴染みがないかもしれません。標準生命表は、保険会社が会計上積み立てる標準責任準備金の計算に用いられる死亡率のことです。標準生命表の改定を踏まえて、保険料を算出する際に用いる予定死亡利率が引き下げられます。保険会社は併せて、予定利率や予定事業費率などの他の保険料計算基礎利率も改定するようです。予定死亡率等の引き下げにより、結果として死亡保障の保険料(定期保険など)が低くなる一方、生存率の改善により給付金の支払いが増加する医療保障(終身タイプ)の保険料は高くなることになります。ただし、各保険会社の販売戦略等があることから、予定死亡率等の引き下げがあっても、記載のように保険料が一律に改定されるわけではなく各社各様となるようです。

ここで注意したいのが、予定死亡率等の改定、言い換えれば「保険料」の負担が変わる度に、「保険料が上がるから○○月までに加入したほうがお得ですよ」あるいは「保険料は○○月から引き下げられる予定ですから保険に加入するのはそれまで待ちましょう」等々のトークが聞かれることです。改定によって保険料の負担額が変わるのですから、家計の負担を考慮すればその通り!と思われるかもしれませんが、保険=保障は、保険料の負担額の大小を重視して決めるのではなく、保障の必要の有無で決めるのがいつの時代も基本だということを忘れてはならないのです。

代表的な死亡保障(死亡保険)は、被保険者に万一のことがあり残された家族が経済的に困るのであれば、加入する必要はあるでしょう。しかし、経済的に困る人がいない独身の人、家族がいたとしても、遺族年金や働いて得られる収入、加えて保有している金融資産などを含めればその後の生活が賄える人であれば、死亡保障は不要ということになるのです。
また、死亡保障が必要な人であったとしても、生涯同一額、あるいは歳を重ねるほど死亡保険金が高額になるなどということもありえません。基本的な考え方に沿えば、死亡保険金(死亡保障)が最も高額になるのは末子が生まれた日。子どもを1人と考えるなら1人目が生まれた日、2人と考えるなら2人目が生まれた日・・・となるわけです。親の役目(子育て)は子どもを社会に出すまで(大学進学まで考えるなら22歳)ですから、末子が生まれた日が最も子育て期間が長いことから高額になるというわけです。後は子どもの成長とともに死亡保険金額は減少していきます。極端に言えば、1日経過する毎に社会に出すまでの日が減るのですが、死亡保険金も同様に減少することになるのです。ただし、日々死亡保険金を減額するのは現実的ではありません。実際は、節目を迎える度に見直しを行うとよいでしょう。子どもが生まれた後、小学校に進学、中学校に進学などというように見直すのです。定額型の保険であれば、このような見直しが基本になりますが、手間暇をかけるのが面倒と考えるならば、収入保障保険や逓減定期保険を活用されると良いでしょう。これらの保険は時の経過と共に、階段を降りるようにだんだんと死亡保険金が減少していくからです。

保険に加入するのは保険料の改定の時期などで前後する(判断する)ものではありません。「必要な時期に必要な保障を得る」のがいつの時代も基本となるのです。車の保険にたとえれば、車を運転するから自動車保険に加入する=必要。車を運転しなくなった=不要だから自動車保険に加入する必要はないということ。人に関する保障も同様に考えればよいのです。
深野 康彦(ふかの やすひこ)
AFP ファイナンシャル・プランナー
有限会社ファイナンシャルリサーチ 代表

 
公開日: 2018年03月22日 10:00