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要介護状態の老親がいる場合に知っておきたい障害者控除
勤労者が受け取るお給料に対する税金は、毎月源泉徴収された上で12月の年末調整によって過不足が調整されるため、原則として確定申告は必要ありません。ただ、給与所得者でも確定申告が必要なケースや、確定申告によって納め過ぎた税金が戻ってくるケースもあります。来年に向けて、自分に関係することがないかどうか、改めて確認しておきましょう。
■確定申告が必要な主なケース
まず、新たに住宅ローンを組み、住宅ローン控除の適用を初めて受ける方は、1年目だけは確定申告が必要です。また、給与所得(および退職所得)以外の合計所得金額が20万円を超える人も確定申告が必要です。これには、2017年に大きく上昇して話題となった仮想通貨による利益も含まれます。2018年に起こった様々な問題を受けて仮想通貨を売却し、利益が出た人は、2019年2月~3月に確定申告が必要となりますから、忘れないように気をつけましょう。また、年末調整で計算されない所得控除の適用を受ける際にも確定申告が必要です。所得控除とは、納税者の個人的な事情や社会政策的な観点から税負担を調整するものです。配偶者控除や生命保険料控除など全部で14種類あり、原則として年末調整で計算されるのですが、医療費控除、寄付金控除、雑損控除の3つは、自分で確定申告しなければ適用されません。
■医療費控除とセルフメディケーション税制
代表的なのは医療費控除です。「控除(こうじょ)」とは「差し引く」という意味で、1年間の医療費が一定額以上かかっている人は、その金額を所得から差し引けます。具体的には、実際に支払った医療費等の金額が、1年間で10万円(または総所得金額の5%)を超えると、超えた分が控除対象となります。この医療費は、自分のものだけでなく、家族の医療費についても合算できます。また、不妊治療やレーシックのように健康保険の対象外となる医療費でも、所得税の医療費控除の対象になる点にも注意が必要です。
また、平成29年分の所得税からは、セルフメディケーション税制が始まりました。セルフメディケーション税制とは、健康診断などをしっかり受けている人が、スイッチOTC薬という対象の市販薬を購入した場合に、その金額が所得控除の対象になるというもの。前述した従来からの医療費控除は、1年間の自己負担額が10万円を超えた金額が対象ですが、セルフメディケーション税制では、1年間に12,000円を超えた金額が控除対象となります。ただし、控除を受けるためには薬を購入した際の領収書が必要なので、年末に慌てることがないように、領収書をしっかり保管しておいてください。なお、従来の医療費控除とは選択適用となる点にもご注意ください。
■要介護認定者がいる場合の障害者控除
また、意外と知られていないのが障害者控除です。障害者控除とは、納税者自身又は控除対象の配偶者や扶養親族が、所得税法上の障害者に該当する場合に差し引けるものです。
この「所得税法上の障害者」は、法律によって限定列挙されており、この中には、介護保険の要介護認定者は含まれません。そのため、要介護認定を受けていても、そのままでは障害者控除の適用対象にはなりません。ただし、介護保険の要介護認定を受けていると、市区町村に申請することで、障害者控除対象者認定を受けられる場合があります。認定されると、27万円(特別障害者の場合は40万円)の障害者控除が適用されるため、該当するご家族がいらっしゃる場合、まずは市区町村の介護保険認定窓口に確認してみてください。多くの窓口では、サイトからダウンロードした申請書に必要事項を記入して送るだけで、1週間から10日ほどで結果が通知されます。さらに、過去の認定書も出してもらえます。2017年分の確定申告期限は既に終わってますが、払い過ぎた税金の還付を受けるための手続きを「更正の請求」と言い、申告期限から5年以内であれば可能です。過去に申告を忘れていた場合は、この機会に手続きしてみましょう。
栗本 大介(くりもと だいすけ)
CFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野 主任研究員
株式会社エフピーオアシス 代表取締役