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預金を医療保険代わりの代用にする

人生100年時代を迎えつつあることから、保障に対する考え方も大きく変化していきそうです。万一に対する備えが「亡くなったとき」から「大病あるいは大ケガをしたとき」に変化しつつあるからです。近年、生命保険の広告を見聞きしていると、高齢になっても加入できるものが格段に増えています。持病があっても加入できる保険などはその最たるものと言えるでしょう。今後は(既に一部は変化あり)さらに、認知症や介護に対する保障を求めるニーズか増えてくると予想されます。なぜなら、高齢になればなるほど健康とは程遠い状態になる傾向が高いからです。度々言われる「健康寿命」と「平均寿命」の間には約10年の隔たりがあるのですから、生存給付型の保障を求めるのは致し方ない面があると思われます。ただし、保険で全てのリスクに備えようとすれば、高額の保険料を一生涯(終身)払い続けなければならないこともありえるのです。医療保険を始めとする生存給付型の保障は、保障は終身ですが保険料の支払いは有期払いがあるものの、毎月の保険料が高額になるケースが多いことから、終身払いとする契約が多いように感じられるからです。

人生100年時代に備えるために医療保障を充実させるのは間違いではありませんが、一方では不安が先立つのか医療保障の加入過多の人も見受けられます。医療に対する考えは人それぞれなので、万人に共通する「これだけの医療保障で充分」という水準はありません。しかし、大多数の人は資金(資産)に限りがあるのですから、もう少し医療保障を柔軟に考えてもよい気がしてなりません。結論から言えば、もう少し「貯蓄」を上手く活用しようということです。金融広報中央委員会(知るぽると)が毎年調査している「家計の金融行動に関する世論調査」によると、貯蓄の目的(3つまで回答できる)の中で常にトップを争うのが「病気や不時の災害への備え」と「老後の生活資金」です。大多数の人が貯蓄の目的で「病気や不時の災害への備え」を挙げているにもかかわらず、一方で高額の医療保障を得ようとする行動に矛盾を感じないのでしょうか。
「医療費がどれくらいかかるかわからない」あるいは「高額な医療費を請求されたら」等々、理由を挙げればキリがないのでしょう。「経済合理的」になれないという考え方もあるかもしれません。しかし、実体験から言えば、驚くほどの医療費がかかるケースはまれと思われるのです。筆者は、このコラムで度々家族の実体験を参考となると思い書いています。その実体験からすると、他界した父が70代前半で「腹部大動脈瘤」の手術(破裂しそうなので防ぐ手術)では、医療保険からの給付金が余ったので、テレビを買い替えました。80代前半で行った肝臓ガンの手術では医療保険は切れていた(80歳までの保障)のですが、数十万円の医療費で賄うことができました。亡くなる1年前は、あちらこちらの病院に行きました(入院等もして最後は病院で亡くなりました)が、それでも年間の医療費は80万円もかかりませんでした。また、母親が脳梗塞で倒れ入院した際も、リハビリ病院を含めて最終的には30万円かかるか否か(高額療養費の還付が確定していない)です。要介護2となり筆者と同居していますが、生活費、介護費(デイサービス等利用)でも年金だけで充分賄えているのです。
このような経験談があるため、筆者は貯蓄、正確には定期預金を医療保険代わりとしており、医療保険には何も入っていません。保障で備えることを否定はしませんが、代用できるものがあればあえて保障を確保する必要はないはずです。皆さんももう一度貯蓄の目的を自問自答していただきたいと思います。必ずしも多額の保障を得ることが安心、かつ家計にプラスとは言えないのです。
深野 康彦(ふかの やすひこ)
AFP ファイナンシャル・プランナー
有限会社ファイナンシャルリサーチ 代表
 
公開日: 2018年04月19日 10:00