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知っておきたい4月以降のがん治療の三大トピックス

2018年4月から診療報酬が改定され、医療の値段が変わっています。がんの三大治療ともいうべき、「手術療法」「放射線療法」「薬物療法」のいずれにおいても大きな変化が生じていますが、今回、FPや第三分野商品を取り扱う業界の方々が知っておくべき(というか、知っていないとちょっと恥ずかしい)、がん治療の三大トピックスをご紹介ましょう。

1.「網羅的がん遺伝子検査(がんクリニカルシーケンス検査)」が先進医療に追加
2017年10月に策定された「第3期がん対策基本計画」の中にも盛り込まれている「がんゲノム医療の推進」―この分野で大きな動きがありました。
そもそも「ゲノム」というのは、遺伝子(gene)と、すべてを意味する(-ome)を合わせた造語で、DNAに含まれる遺伝子情報全体のこと。このゲノム情報を網羅的に調べ、その結果をもとにして、より効率的・効果的に診断と治療などを行うのがゲノム医療です。
つまりゲノム医療推進のためには、遺伝子検査が欠かせません。同検査は数年前から「プレシジョン・メディシン」の一環として大学病院などで行われていますが、基本的には自由診療の扱いでした。それが初めて先進医療として承認されたのです。対象となったのが国立がん研究センターの「マルチプレックス遺伝子パネル検査」で、4月9日より開始されています。
現時点で、先進医療として適用が受けられるのは、「標準治療」を終了あるいは適用外の患者に対してです。標準治療がある場合はそちらが優先されます。前掲の遺伝子検査の場合、先進医療にかかる費用は46万4,000円(患者負担分)の予定。
ただし、これはあくまでも検査にかかる費用です。検査の結果、効果が期待できる薬剤(分子標的治療薬)が見つかった場合、参加できる治験があればそちらを紹介してもらう、あるいは先進医療と自由診療を併用、自由診療のみで治療を行うなどになりますが、費用が高額になる可能性は高いでしょう。とはいえ、多くの患者が順番待ちをしている期待度の高い医療だけに、先進医療に加えられたのは特筆すべきことです。
なお、網羅的がん遺伝子検査については、2017/6/1付けコラム「最新のがん医療「プレシジョン・メディシン」とお金の関係」をご参照ください。

<参考>
「個別化医療に向けたマルチプレックス遺伝子パネル検査の先進医療承認について」国立がん研究センター
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2018/0403/index.html

2. 前立腺がんが先進医療から外れ、保険適用に
2つ目は、先進医療から‘卒業’し、保険収載(保険適用)された医療についてです。
4月から、「前立腺がん」や「頭頸部のがんの一部」(頭頸部腫瘍のうち、口腔、咽喉頭の扁平上皮がんは対象外)の粒子線治療において保険適用が認められることになりました。粒子線治療については、2016年4月の診療報酬改定で、「小児がん」に対する陽子線治療と、手術非適応の「骨軟部がん」に対する重粒子線治療の保険適用が承認済みです。とくに、前立腺がんに対する粒子線治療は、これまで「先進医療」として、年間約1,700人の患者が治療を受けていました。この患者数は、粒子線治療の中で最も多く、日本放射線腫瘍学会のデータによると、前立腺がんは、重粒子線治療の約61%、陽子線治療の約34%を占めています(2016年5月~2017年6月末までで、100件以上のもの)。それだけに保険適用となった場合の影響も少なくないでしょう。しかし今後は適用基準がより厳格化される可能性は十分にあります。
医療費は総額150~160万円と、これまでの約半分となる見込みで、3割負担の場合で約50万円。高額療養費制度を利用すれば、一般的な所得の方なら約9万円程度の負担です。ただし、先進医療特約付きの民間保険に加入している方にとっては、負担増となります。
先進医療特約について、説明を粒子線治療の前立腺がんの事例を使っていた場合は急いで差し替えを!

3.ロボット支援手術「ダヴィンチ」で保険適用されるがんの種類が拡大
3つ目は、手術療法についてです。
4月から、ダヴィンチについて、これまで保険適用されている前立腺がん(2012年度)、腎がん(2016年度)に加え、胃がん、食道がん、直腸がん、肺がん、縦隔腫瘍、膀胱がん、子宮体がんなど主要ながんに適用範囲が拡大されました。通常の流れで言えば、有効性が証明されていない医療技術等は、先進医療の適用を経た上で、保険収載されるというのが一般的ですが、手術ですので、とにかく導入してやってみないことには有効性も立証できないという判断だったようです。
かかる費用は、胃がんで約200万円だったものが、3割負担なら50~60万円に。ただし、前述の前立腺がんの粒子線治療と同じく、胃がんは、先進医療Bに「ダヴィンチを用いた胃切除術(根治切除が可能な胃がん)」が含まれていました(約108万円)。
いずれも、民間保険との関係で、4月以降は費用負担が変わってくることにご注意ください。
黒田 尚子(くろだ なおこ)
CFP®認定者
1級ファイナンシャルプランニング技能士消費生活専門相談員資格
消費生活専門相談員資格
CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター
公開日: 2018年04月26日 10:00