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医療保障「180日ルール」の改訂

近年、医療保障(共済・保険)に共通の「180日ルール」 を改訂したり、従来とは異なる解釈をしたりする保障団体が増えています。加入者に対する影響とともに、医療保障に求める本質を考えてみましょう。

■180日ルールとは
「180日ルール」は、同一の疾病 で入退院を繰り返した際に、退院から再入院までの間隔が180日を越えていない場合は、同一入院とみなして入院日数を通算するものです。
このルールにより、短期間に同一の疾病により入(退)院を繰り返すと、回を追うごとに給付を得にくくなります。極端なケースでは、1入院の給付日数が60日型の医療保障に加入している場合、最初の入院が60日を越えると、以後180日の間隔を空けない再入院を何度繰り返しても給付を得られないことになります。給付されるのは、短期間に原因の異なる疾病で入退院を繰り返す非常に稀なケースに限られます。

■ルールの改訂 ① 緩くしたケース
このルールの解釈を緩く取り扱うようになったケースから見てみます。
短期間に同一の疾病で入退院を繰り返すケースで、2回目の入院が給付対象にならない場合でも、3回目の入院が1回目の退院から180日空いていれば入院日数を通算せず、給付することにしたものです。これにより限定的ではあるものの従来よりも給付を得やすくなっています。

■ルールの改訂 ② 厳しくしたケース
次に取り扱いを厳しくしたケースです。
従来の「180日ルール」で退院から再入院までの間隔を問われるのは、同一疾病の場合だけでしたが、このルールを異なる疾病にも適用するものです。180日を空けない再入院は、疾病の種類を問わずどうあれ給付日数を通算されるようになったのです。
当初は、インターネット通販を中心に行う2社に限られた取扱いでしたが、その後、大手生保1社が追随、この春からさらに1社が追随し、把握している範囲では4社に増えています。今後もこの傾向が続くとすれば、短期間に入退院を繰り返すケースで給付が得にくい医療保障が増えていくことになります。

■医療保障の本質と解決策
そもそも「180日ルール」により深刻な影響を受けるのは、1入院の給付日数が60日型のように短い医療保障です。1入院の給付日数が180日型、365日型のように長い医療保障であれば、どのようなルールに基づいて入院日数を通算されても、その影響を受けにくいのです。
高齢者は、同じ疾病で一進一退を繰り返すことから入退院を繰り返す傾向にあります。その意味では1入院の給付日数が60日型のように短い医療保障は、一生涯の医療保障(=終身医療保障)としてはそもそも不向きなのです。加入者が一生涯の医療保障を検討するときに心配するのも、長患いにより医療費負担が大きくなった場面であって、短期間に異なる様々な疾病に次々と罹患する場面ではないはずです。

新たな制度(商品)が登場しルールが改訂されたとしても、加入者が医療保障に求める本質が変わらない限り、こだわるべきは1入院の給付限度日数なのです。
関口 輝(せきぐち あきら)
AFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野 事務局長
 
公開日: 2018年06月07日 10:00