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共済・保険契約と贈与の関係

個人から個人に対する無償の財産の移転を贈与といいます。財産を受け取った人は、1年間に贈与を受けた金額が一定額を超えると贈与税を負担しなければいけません。ただし、共済や保険契約の場合、ご自身に贈与税がかかることに気付いていないケースがあるため、注意が必要です。

■年間110万円を超える贈与には贈与税がかかる
贈与は、あげる人(贈与者)ともらう人(受贈者)の契約です。内容は当事者間で自由に決められますが、1月1日から12月31日までに贈与を受けた金額が110万円を超えた受贈者に対しては、贈与税が課せられます。
なお、贈与の目的が、一定の親族間における住宅の購入資金や教育資金、結婚・子育て資金等、税金のかからない金額が大きくなる特例があります。親族間の贈与の際にこうした特例を使えるかどうかを確認しましょう。

■贈与に利用される共済・保険契約
贈与の際に、共済や保険の契約を利用することがあります。ここでは代表的な3つのケースをご紹介します。

【ケース①】
満期金のあるタイプの契約で、掛金の支払い者と満期金受取人が違うケースです。典型的なのは、親が掛金を払い、子が満期金を受け取る契約形態で、満期金受取時に贈与税の課税対象となります。

【ケース②】
ケース①において、名目上の契約者を子にするパターンです。加入者証や保険証券では契約者も満期金受取人も「子」のため、見た目(名目)上は贈与になりません。しかし、実際の掛金を受取人以外の人(例えば、親)が負担していれば、受け取った満期金は贈与税の課税対象となります。ここで大切なのは、書類上の契約者が誰なのかではなく、現実の掛金負担者が誰なのかという点です。税金はあくまでも実質で判断されます。

【ケース③】
ケース②と同じ契約形態で、親が直接掛金を負担せず、子に対して掛金相当額を毎年贈与し、そのお金を使って、子が自分名義の口座から掛金を支払うパターンです。
ケース②と同じく、実際にお金を出しているのは親であるものの、贈与しているのは、あくまでも「毎年の掛金に充当するためのお金」です。そのため、毎年の贈与額が110万円以下であれば贈与税はかかりません。そして、満期時に受け取る共済金や保険金も贈与税の対象にはなりません。この場合は、掛金の負担者と満期金の受取人が同じとなるため、支払った掛金の合計額と受取金額の差額等が、一時所得として所得税・住民税の課税対象となります。

■途中で契約者が変わっているケースに注意
ここまでは、比較的わかりやすいケースを見てきましたが、次のようなケースはどうなるでしょうか? 
ケース①の状態、すなわち親が掛金を負担し、満期時の受取人が子であるケースにおいて、満期前にケース③の状態に変更したとします。この結果、受取時点の形式上は、掛金負担者である契約者も満期金の受取人も子ですから、贈与税の課税対象にはならないように見えます。でも実際には、契約者変更までの期間に相当する満期金は贈与税の課税対象になります。例えば、満期までの期間が10年あり、そのうち9年間(90%に相当する期間)の掛金を親が負担していると、受け取った満期金のうち90%は、贈与税の課税対象となるのです。贈与税は、申告者が確定申告しなくてはなりませんが、このケースは、ご自身に贈与税の納税義務があることに気づかないままとなる可能性があります。

なお、こうした事情を税務署が正しく把握できるように、2018(平成30)年1月1日より、生命保険会社から税務署へ提出される支払調書の提出基準及び記載内容が変更されました。
ポイントを要約すると、①契約者の死亡による名義変更時に、保険会社に法定調書の作成と提出が義務付けられる、②保険金の支払時に保険会社が作成提出する支払調書に、過去の契約変更履歴、払込みした掛金の情報などの記載が義務付けられる、という2点です。
これによって、今までは見落とされがちだった、契約期間途中での契約者変更や、契約者死亡による契約者変更等の実態を税務署が正しく把握できるようになりました。
適正な納税は国民の義務ですが、知らなかったばかりに申告が遅れ、結果として延滞税などの余計な負担が発生することがないよう、ご自身の共済や保険をチェックしてみましょう。
栗本 大介(くりもと だいすけ)
CFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野 主任研究員
株式会社エフピーオアシス 代表取締役
公開日: 2018年06月28日 10:00