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公的年金の加給年金
生年月日が昭和26年4月1日以前の人には期間の特例がありますが、すでに年金を受給している世代なので、ここでは昭和26年4月2日以降生まれの人という前提で説明します。
1.老齢厚生年金の加給年金
老齢厚生年金の加給年金は、(1)本人の厚生年金保険の被保険者期間が20年以上あり、かつ、(2)本人65歳以降(※2)に生計維持関係にある配偶者または子がいる場合に、老齢厚生年金に加算されます。
ただし、配偶者が(1)65歳になったとき、(2)20年以上厚生年金に加入していた配偶者が特別支給の老齢厚生年金を受給し始めたとき、(3)配偶者が死亡したとき、(4)配偶者と離婚したとき、以降の加給年金は支給停止になります。
加給年金額は、配偶者がいる場合には年38万9,800円(2018年度額)です。「子」がいる場合には、各1人に付き、1人目・2人目が22万4,300円(2018年度額)、3人目以降が7万4,800円加算されます。
ここでポイントとなるのは、「生計維持関係」です。
「生計維持関係にある」とは、「同居していること(別居でも仕送りをしている、健康保険の扶養親族であるなどの状態であればいい)」および「加給年金等対象者については、前年の収入が850万円未満、または所得が655万5,000円未満であること」の両方を満たしている状態のことです。一般の方は、収入基準が高めと感じるのではないでしょうか。
加給年金は「公的年金の扶養手当のようなもの」と説明されることもあるためか、所得税の扶養控除の基準と同様に配偶者の年収が多いと支給されないイメージもあるようですが、実際は配偶者が平均的サラリーマン以上の年収であったとしてももらえるのです。
たとえば夫婦共働きで、年下の妻が年800万円の給与を受け取っていた場合、夫が65歳になって年金を満額(老齢基礎年金+老齢厚生年金)受け取るようになると、約39万円の加給年金が加算されます。これは男女が逆になっても同じです。生計維持関係にある年下の夫がいる女性(厚生年金20年以上加入)が、年金を満額(老齢基礎年金+老齢厚生年金)もらうようになると、加給年金が加算されるのです。
2.障害年金の加給年金
障害の原因となった病気やけがの初診日に厚生年金に加入していた場合、所定の障害状態にあると認定されたときには、障害厚生年金や障害手当金が受給できます。
障害厚生年金や障害手当金は、障害等級1級~4級までが給付の対象です。
【障害等級と受給できる年金等の種類】
障害等級1級・2級 …障害厚生年金+(配偶者)加給年金
障害等級3級 …障害厚生年金 (加給年金はない)
障害等級4級 …障害手当金(一時金)
上記のように障害等級1級・2級と認定された人に、生計維持関係にある配偶者がいる場合には、障害厚生年金に加給年金が加算されます。ただし老齢厚生年金の加給年金同様に、配偶者が65歳になったときや配偶者の死亡、配偶者との離婚以降は、加給年金は停止されます。一方、老齢厚生年金の加給年金との違いは、①子は対象ではないことと、②加給年金の金額(22万4,300円)が異なること、です。
老齢厚生年金の場合もそうですが、配偶者の年収が高めであっても支給されるという点で、シングルの方の立場からすると加給年金は、やや不公平感を感じる制度かもしれません。
※1 遺族年金や加給年金の対象となる「子」とは、18歳になった後の3月末までの子、または20歳未満で障害等級1級・2級に該当する未婚の子を指す
※2 65歳より前であっても、長期加入者の特例などにより定額部分も含めて老齢厚生年金が受給できる人には、条件を満たした配偶者や子がいる場合には加給年金が加算される
山田 静江 (やまだ しずえ)
CFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野 研究員
日本FP協会埼玉支部 副支部長