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広がりを見せる「オンデマンド保険」

保険に加入する場合、「必要な期間に対して必要な分だけ」というのが原則ですが、この考えに基づいた究極の保険が「オンデマンド保険」かもしれません。
オンデマンドとは、英語で「On-Demand(要求(Demand)に応じて)という意味。つまり注文に応じて対応するということで、オンデマンド保険は、必要な時だけ加入する保険のこと。
最近、スマートフォンなどの普及によって、保険とITが融合した「インステック」を象徴するオンデマンド保険が、損保会社を中心に広がりを見せているようです。

代表的なオンデマンド保険といえば、1日or24時間単位で契約できる自動車保険でしょう。
本格的に発売されたのは、東京海上日動火災保険「ちょいのり保険」が最初で2012年1月から。2017年2月には、累計利用申込件数380万件を突破したという人気商品です。
同社によると、この保険は、日頃あまり運転せずマイカーを持っていない人が、家族や友人の車を借りて運転するケースなどによく利用されるということで、加入者も10~20代の若年層が大半を占めています。
このほか、2015年10月から、あいおいニッセイ同和損害保険「ワンデーサポーター」、三井住友海上火災保険「1DAY保険」なども取扱いを開始しています。
保険料は、各社とも車両補償なしプランで1日500円、同補償付きプランになると1日1,500円と3倍になってしまいますが、運転に慣れていないドライバーであれば、車両補償付きの方が安心かもしれません。
さらに、三井住友海上火災保険は1日1,800円で車内手荷物の補償も付加できます。
これらの損保各社の販売好調な状況からか、損害保険ジャパン日本興亜でも、今年度中を目途に1日型の自動車保険を販売する予定だそうです。

自動車保険ばかりではなく、ゴルフやレジャー向けのオンデマンド保険も登場しています。
三井住友海上火災保険では、2018年4月2日から「レジャーに行く時だけ」「ゴルフをする時だけ」など、必要な時のみ24時間単位で加入できる「1DAYレジャー保険」の取扱いを開始しました。
個人で加入する8タイプと幹事がまとめて加入する2タイプの合計10タイプがあり、前者は、補償内容に応じて500円または700円の2種類、後者は、1名あたり300円です。
補償内容は、ケガをした際の死亡保険金や入院時一時保険金、人をケガさせてしまった場合等の賠償保険金などに加え、捜索活動を補償する救援者費用、ホールインワン・アルバトロス費用など、レジャー内容に応じた補償がセットされています。

また、1日単位で加入できるレジャー向け保険としては、損害保険ジャパン日本興亜が、2010年12月からソフトバンクを通じて、携帯電話ユーザー向けに提供している「ソフトバンクかんたん保険」もあり、いわばオンデマンド保険の先駆けとも言えるでしょう。
同社によると、「スポーツ・レジャー保険(1日プラン)」や「ゴルファー保険(1日プラン)」が人気で、保険料収入は前年比約1.2倍とのことです。
月額プランとなりますが、子どものケガや熱中症、ウィルス性食中毒のほか、地震・噴火・津波によるケガなども補償する「子供のあんしん保険」(月額保険料相当額350円~)などもあり、今年の酷暑の影響からか前年度比で2割程度、契約件数が伸びています。

さらに、身近な家電製品に24時間単位で付加できる動産保険も登場しています。
2017年8月から、保証書のクラウド管理アプリを運営するWarrantee社が、東京海上日動火災保険と提携して、オンデマンド保険アプリ「Warrantee Now(ワランティー ナウ)」の提供を開始。三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険、代理店の三井物産インシュアランスの3社と連携しています。
一般的な家電製品の保証は購入時にしか付けらず、しかも通常使用時の自然故障しか補償されません。しかし、この保険は、購入済みの製品に利用可能。自然故障だけでなく破損や汚損、水濡れなども補償の対象となります。
保険料は、洗濯機やテレビなどの生活家電が24時間19円、デジタルカメラやPCなどデジタル家電が24時間39円です。
旅行のときなど、一定期間のみ補償をつけておきたいというニーズに対応していますが、対象となる製品には、自然故障・破損などトラブルの種類に応じて、発売から一定年数の制限があります(デジタル家電であれば発売後3年以内など)。
さらに、損害保険ジャパン日本興亜では、2017年にオンデマンド保険を手掛ける米国のベンチャー企業と組み、年内にも、カメラなどの身近なデジタル機器に時間単位で補償をつける保険を販売する予定とのこと。加入や事故対応、保険金請求はスマホで完結させることが可能です。

旅行やレジャーに出かける機会の多くなる時期、これらのオンデマンド保険を検討している人も多いのではないでしょうか?
ワンコインといえども、保険に変わりはありません。オプションの内容や割引制度などは、商品によって異なりますし、加入時には、補償内容や補償期間など、保険の約款等をよく読んできちんと理解しておくこと大切です。
また、すでに加入している保険と重複加入がないかも確認しておきましょう。
黒田 尚子(くろだ なおこ)
CFP®認定者
1級ファイナンシャルプランニング技能士消費生活専門相談員資格
消費生活専門相談員資格
CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター
公開日: 2018年08月09日 10:00