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NISAの非課税期間終了時の手続き

2014年に一般NISAで購入された上場株式や公募株式投資信託等は、2018年12月に非課税期間が終了します。筆者の元にも非課税期間終了後の手続き等に関する質問が増えつつあることから、今回はその手続き等に関して解説させていただきます。先に申しておくと、取引を行っている金融機関から順次案内が届くため、各社の定める期限までに手続きを行う必要があります。

まず非課税期間が終了する前に、(1)新たな一般NISA口座に移管(ロールオーバー)する、(2)特定口座等の課税口座に移管するのいずれかの方法を選ぶことになります。
(1)の新たな一般NISA口座に移管する方法ですが、この方法を選んだ場合、2019年1月1日に、2018年12月の最終営業日の時価(12月28日の終値)により、2019年の非課税管理勘定(一般NISA口座)へ移管することになります。移管された場合、引き続き5年間(2023年12月末まで)は、譲渡益や配当金等が非課税扱いとなります。移管(ロールオーバー)を選んだ場合、一般NISA口座を開設している金融機関に対して、あらかじめ「非課税口座内上場株式等移管依頼書」を提出する必要があります。このロールオーバーですが、2018年12月の最終営業日の時価が非課税枠の120万円未満の場合、120万円との差額で新規投資を行えます。たとえば、2018年12月の最終営業日の時価が80万円だった場合、ロールオーバーを行うことで80万円の非課税投資枠を使用することになるため、差額の40万円まで新規投資を行えます。一方、2018年12月の最終営業日の時価が120万円の非課税枠を超えていた場合、ロールオーバーを行うことはできますが、非課税枠を全て使用しているため、新規投資は行えません。
注意点としては、異なる金融機関の一般NISA口座へはロールオーバーを行えず、一般NISA口座から「つみたてNISA口座」へのロールオーバーもできません。また、2019年にロールオーバーする価額によって、2018年末の年跨ぎの受け渡しとなる購入分が、2019年に設定される新たな一般NISA口座に受け入れられなくなることを防止するため、金融機関によっては、一般NISA口座における2018年12月末の取引が制限される可能性があります。
 (2)の特定口座等の課税口座に移管する場合、2018年12月の最終営業日の時価により、課税口座へ移管されます。このケースでは、特定口座を一般NISA口座と同一の金融機関の同一の支店に保有している人は、特段の手続きを行う事なく、特定口座に移管されることになります。課税口座に移管された場合、取得価格は一般NISA口座で購入した価格から、2018年12月の最終営業日の時価に取得価格が変更になる点に注意が必要になります。

いくつか具体例をあげて解説すると、たとえば一般NISA口座で100万円で購入した上場株式を、150万円に値上がりしている局面で課税口座に移管したケースを考えてみましょう。このケースでは、その後株価が200万円に上昇した時点で売却した場合、50万円が譲渡益とみなされ税金が課せられることになり、反対に120万円に値下がりした時点で売却した場合、30万円が譲渡損失となります。一方、一般NISA口座で100万円で購入した上場株式を、70万円に値下がりしている局面で課税口座に移管した場合も見ておきましょう。その後株価が上昇して100万円に戻った時点で売却した場合、30万円が譲渡益とみなされ税金が課せられることになります。また、50万円に値下がりした時に売却した場合は、20万円が譲渡損失になります。
移管後の時価がどうなるのかは事前にわかりませんが、投資商品の状況等を確認したうえでロールオーバーか、課税口座へ移管するのかを決めるようにしましょう。
深野 康彦(ふかの やすひこ)
AFP ファイナンシャル・プランナー
有限会社ファイナンシャルリサーチ 代表
公開日: 2018年08月16日 10:00