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教育費への備えと対策

今や学生の2人に1人以上が利用している奨学金には、貸与型と給付型があります。利用を検討されている方もいらっしゃると思いますが、将来返済が必要な貸与型奨学金では、延滞者の急増が社会問題にもなりつつあるため、無計画な利用は避けたいところです。返済不要の給付型奨学金制度を優先して検討するためにも、利用できる奨学金制度の情報を多く集めることが重要です。今回は代表的な融資制度(貸与型)と、私立大学の学費を抑える方法についてご紹介します。

1. 教育費と借入金の現状
2人のお子様を幼稚園から中学まで公立、高校と大学を私立に通わせた場合、学校納付金だけでおよそ2,346万円 の費用がかかります。そして、教育費は満遍なくかかるわけではなく、特に大学の4年間に集中するものです。第1子と第2子の年齢差が1歳の場合、教育費だけで300万円を超える年が4年連続します。一般勤労者の場合は貯蓄を取り崩すことが前提になりますが、勤労者世帯の平均貯蓄額は1,327万円 ですので、平均的な貯蓄額では老後資金が不足をする事態も想定されます。対策として、できるだけ早いうちから貯蓄を始めることが挙げられますが、一方で、現実的な対応として教育資金を借り入れで賄うケースもあるため、融資制度についての情報収集も備えとしては有効です。代表的な融資制度を確認してみましょう。

2.代表的な融資制度
2-1日本学生支援機構の奨学金
経済的な理由により修学が困難な学生や生徒に貸与される制度で、無利息の「第一種奨学金」と有利息の「第二種奨学金」があります。第一種奨学金は学力基準や家計基準を満たした方が受けられます。第二種奨学金は第一種奨学金より基準が緩やかですが、上限利率3.00%の範囲で利息がかかるため、卒業後の返済負担が大きくなります。
仮に、第二種奨学金の上限である月額12万円の貸与を受けると4年間の借入総額は576万円となり、非常に大きな借金を抱えた状態で社会人生活をスタートすることになります。貸与月額をいくらにするのかは慎重に検討したいところです。なお、日本学生支援機構では、返済不要の給付型奨学金制度も始まっています。要件は厳しいものの、優先して利用を検討したいものです。

2-2 日本政策金融公庫の教育一般貸付
融資の対象となる学校に入学・在学する子息の保護者で、一定条件に該当する場合に融資が受けられる制度です。月額貸与ではなく一括貸与なので、まとまった資金が必要な場合に適しています。
融資限度額は学生・生徒一人につき350万円まで、融資利率は1.76% と銀行の教育ローンに比べて低利に設定されていますが、仮に350万円を15年返済で借りると月々の返済額は22,300円、総返済額は398万円となり、50万円近い利息を負担することになりますので、無計画に借りるのは避けたいところです。

3.私立大学の学費を抑える方法
学生や受験生に対して奨学金を実施している大学もあります。
一例として、早稲田大学の「めざせ!都の西北奨学金」は、授業料の半額が給付される上、採用数が1,200名 と多くなっています。ただし入試前に募集が終了するため、知らずに利用を断念するケースの多いようです。期限内に申請し、試験に合格すれば奨学金を受けられる可能性は高くなりますので、こうした制度の活用で私立大学の学費を大きく抑えられます。
ちなみに、国公立大学に奨学金制度はありませんが、全ての大学で授業料の全部または一部を免除する制度があります。

4.まとめ
教育費の融資制度として、「日本学生支援機構の奨学金制度」や「日本政策金融公庫の教育一般貸付」はよく知られていますが、学内の奨学金制度は学生の間でもあまり知られていないのが現状です。返済不要のものも多いため、他の融資制度に優先して検討したい制度です。お子様は受験勉強に忙しくて奨学金まで調べることができないかもしれませんので、親御さんが率先して調べて情報共有なさるのがよいでしょう。
中山 浩明(なかやま ひろあき)
CFPファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野 研究員
公開日: 2018年10月18日 10:00