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知っておきたい認知症保険のポイント

団塊の世代が75歳以上となる2025年には、認知症患者数は700万人前後に達し、65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症となる見込みだと予測されています。そのような状況下、認知症保険は保険商品、あるいは医療保険の特約などで発売されています。介護分野の中でも認知症に特化しているため、保険料を安く抑えることができます。
保険会社は今後高齢化でシニア層を中心に市場の拡大が見込まれるこの分野に力を入れ、そして保険の給付だけではなく、予防やサービス、相談などの付加価値をつけ、商品の差別化を図っています。
私の周りでもお母様が認知症になり介護が大変で心身共に疲れたという経験をされた方がいらっしゃいます。公的介護保険を利用しながら民間の施設も活用し、仕事も立派にこなして頭が下がる思いでした。家族としては様々な施設やサービスを利用するにしてもお金の問題は必ずつきまとってきたとの事でした。また生活のリズムが変わり介護する側も相当な疲労があり体力を消耗したとの事。認知症保険もなく、民間の介護保険も今ほど普及していない時代で、こんなに大変なことかと身をもって体験したお話は説得力があるものでした。家族だけでなく親戚やご近所の理解も必要だったと目に涙を浮かべてお話ししてくれました。どんな状態になっても「家族」だからという言葉が心を打ちました。

さて、この認知症保険の概要・詳細ですが、まず加入に関しては生命保険会社が販売している商品では、(A)標準体で引き受ける会社と(B)引受緩和型(持病があっても申し込めるタイプ)で引き受ける会社があり、保障は10年更新タイプ、終身タイプがあります。給付の要件は各社条件が異なります。(1)診断確定で給付される会社、(2)器質性認知症になり、かつ、意識障害のない状態において見当識障害があると診断確定され、その状態が180日継続したとき、(3)要介護1以上、かつ、所定の認知症と、保険会社によって異なります。また給付の仕方は一時金のみの会社、一時金と年金の会社があります。一時金は認知症の治療費や介護の初期にかかる費用への備えとして活用、年金は継続的にかかる費用への備えとして活用できます。

損害保険会社が発売する認知症保険は、公益社団法人との連携で開発した保険で、生命保険会社の商品と保険の仕組みが異なります。
(1)認知症の方が行方不明となることへの不安 
(2)認知症の方による第三者に対する不慮事故等への不安 
(3)認知症の方ご自身のケガへの不安  
認知症の方およびそのご家族が抱える不安を軽減するために開発されており、認知症になってからでも申し込めるのが特徴です。
補償内容は、(1)行方不明時の捜索費用補償、(2)個人賠償責任補償では、認知症の方やそのご家族が日常生活で他人にケガをさせたり、他人財物を壊したり、線路へ立ち入りで電車等を運行不能にさせてしまったこと等により、法律上損害賠償責任を負う場合の費用補償、(3)認知症の方が日常生活に起因する偶然な事故で他人にケガをさせ、ケガをされた方がその事故の直接の結果として死亡した場合、賠償責任の有無を問わず支払われる見舞費用補償、(4)認知症の方が交通事故等によるケガで死亡した場合、後遺障害が生じた場合には後遺障害の程度により支払われる補償、(5)付帯サービス 付「捜索支援サービス」などです。 

生命保険会社の商品は「保障」として認知症になった場合に一時金や年金が支払われるのに対し、損害保険会社の商品はすでに認知症でも加入できるので「補償」として第三者に迷惑をかけた時の費用の保険と言えそうです。
高齢化社会の日本、将来の長生きリスクに備えて蓄えるという方法もあります。長生きは素晴らしいことなのにリスクと呼ばれる時代になりました。保険に加入するなら認知症を含む介護を幅広く保障する介護保険で備えるという考え方もあります。どの方法を選ぼうが、認知症になって保険に加入している事自体を忘れてしまうかもしれません。介護保険・認知症保険は必ず家族に加入した旨を伝えておくことが重要です。
田中 美子(たなか よしこ )
AFP ファイナンシャル・プランナー
2級ファイナンシャル・
プランニング技能士
TLC(トータルライフコンサルタント)副称号:生命保険協会認定FP
損害保険上級資格
DCプランナー2級
キャリアコンサルタント
公開日: 2018年10月25日 10:00